プログラミング初学者、たった半年でウェブサービスを開発 武器はコンプレックスと英語力

2020年12月10日 18時00分
<アラフォー記者の探検テック ⑤>
 世の中はプログラミングブーム。とは言え、理系でもなく、10代や20代でもなく、しかも女性という属性だと、敷居が高いと感じる人は多いはず。そんな1人だった記者が半年間、プログラミング学校「ジーズアカデミー」(東京都渋谷区)で学び、Python(パイソン)を使った新聞記事の分析ツールをなんとか作って卒業した経緯は第1回で紹介した。今回は、同じ時期にもっと高度なプロダクトを開発した2人の女性を紹介したい。(小嶋麻友美)

◆最初から「ただ者」ではなかった

 同じ週末コースの受講生だった余田よでん有希子さん(36)は、東京芸術大学大学院を修了、今も同大で映像と音楽のコラボレーションを追究し、教鞭を執る音楽家だ。経歴自体がただ者ではないが、授業が始まって1カ月もすると、ページを動的に操るための言語JavaScript(ジャバスクリプト)を使いこなして実力を発揮。毎週の課題制作では、画面上でクリックしたマス目で自由にメロディーを作ったり、画像の表情を読み取って音楽を鳴らしたりする作品を発表し、クラス中をうならせた。

卒業制作で手掛けた「Namaoto」を発表する余田有希子さん=いずれも11月上旬、東京都渋谷区のジーズアカデミーで

 映像を取り込んで作曲するなど、普段から仕事でマックは使っていたものの、プログラミングを学んだのは初めて。卒業制作では、デジタル時代だからこそ「生の音」にこだわって、演奏家や作曲家、録音エンジニアなど生演奏によるコンテンツ作りに必要な人材と、それを求める人を繋ぐサービス「Namaoto」を開発した。学校では最後に卒業制作のプレゼンテーション大会があるが、決勝に残った20人の中で見事に優勝した。

◆シリコンバレーで味わったコンプレックス

 原動力は何だろうか。「プログラミングへのコンプレックスが力になったと思う」と余田さんは話す。

プレゼンテーションで優勝した余田さん=ジーズアカデミー提供

 入学のきっかけは、3D音響(立体音響)の制作・研究のため米スタンフォード大学で1年間、客員研究員として過ごした経験にあるという。それまでは「自分の仕事に”がちがち”のプログラミングが必要だとは思っていなかった」。ところが、誰もが当然のようにコードを書いている光景に、渡米直後から圧倒された。休日のカフェで、談笑に来たと思った若い女性グループも、席に座るとみんなコードを書いていた。世界のITの最先端、シリコンバレーの現実に衝撃を受けた余田さんは、「『帰国したらプログラミングをやらなくては』と決心した」と振り返る。
 気になったことは徹底的に調べるという探究心と忍耐の強さも、プログラミング力を伸ばす力になったのだろう。現在、「Namaoto」の本格的なサービス開始に向けて話が進んでいる。

◆「一生に一度は起業してみたい」

 同じころ、平日コースに通っていた戸渡文子さん(47)を突き動かしたのは、起業するという強い思いだった。
 期間は同じ半年間だが、毎日朝から夕方まで授業を受ける平日コースは、投じる学費も時間も週末コースの倍以上。より覚悟を決めた人たちが集まっている。

「meetUni」について発表する戸渡文子さん=ジーズアカデミー提供

 英ロンドン大大学院を修了し、2009年から英国の公的教育機関の東京事務所に勤めていた戸渡さんは、勤続10年を経て昨年、退職した。仕事柄、海外の大学で盛んなアントレプレナー教育に触れた経験もあって「一生に一度、自分でも起業してみたい」という気持ちが強くなっていたのだ。
 今の時代、プロダクトを作るならデジタルは欠かせないと考えていた。まずウェブデザインを学んだ後、「世界を変える」というジーズアカデミーのミッションにひかれて門をたたいた。それでも「スタートアップは20代、30代の男性というイメージが強い。私なんかにできるのかな、と不安はありました」と振り返る。
 夫が単身赴任で平日は不在だったことも幸いし、毎日午前3、4時までパソコンと向き合った。コードを書くことは、難しさを感じつつも楽しめたという。プログラミングへの挑戦を応援し、支えてくれる友人や仲間の存在も力になった。

「meetUni」の学生向けページ。来年春までの運用開始を目指している

◆英語でググるのが上達の近道

 卒業制作では、それまでのキャリアを生かし、留学したい学生と世界の大学をつなぐウェブ上のプラットフォーム「meetUni」を開発。今後はチームで改良を続け、来年春までに事業としての運用開始を目指している。
 「女性はプログラミングの世界に入りにくいイメージがあるけれど、女性だから不利ということはないと思う」と戸渡さんは断言する。プログラミング学習の王道は、行き詰まったら「ググる(グーグルで検索)」だが、戸渡さんは得意の英語で検索することで的確な解答が素早く見つかり、大きな強みになったとも言う。
 「留学は女性の方が多いと言われている。語学力を生かせるという点では、プログラミングは女性に向いていると言えるかもしれません」

★40代の記者が思い立ってプログラミング学校に通った経験とともに、「女性×テック」をテーマにIT業界の動きや課題を探っていきます。今後は随時掲載します。

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