紙切り芸続け半世紀 林家正楽 「注文受け考えるのが楽しい」

2020年5月22日 02時00分
 観客からの注文に応じて、はさみで人物や動物、風景などを即座に紙から切り抜いていく寄席紙切り芸の林家正楽。この道50年以上の第一人者は「注文を受けて、どうしよう、こうしようと考えていくのが楽しい」と朗らかに語る。
 「最近はね、高座が面白くてしようがない」と言う。ひょうひょうと冗談を交えて笑いを誘い、おはやしに合わせリズミカルに体を左右に揺らしながら切り進める。見ていても実に楽しそうだ。
 四月初め新型コロナウイルスの影響で休場となるまで東京都内の寄席に出演。今年に入って一番多かった注文はえとのネズミで、節分、お花見、宝船と続き、チコちゃんや東京五輪も。「季節の物もいいし、話題物のご注文もうれしいですね。だって、今、その時だけのことですからね」
 三月、若手落語家五人の真打ち昇進披露興行に出演した際は「新真打ちをお題に切って」と観客がリクエスト。似顔、新真打ちが師匠と並んだ姿を切って見せ、盛大な拍手を受けた。新真打ちの横顔などを見て、ひそかに備えていたのだという。「雰囲気さえ出ればいいんです。一方で建物とか形がぴしっと決まっている物は切るのに困る。少しでも曲がってたら、おかしいですからね」
 高校卒業後、会社勤めが面白くなく、先代正楽の芸を見て「俺はこれをやるんだ」と思い立ち、入門。師匠からもらった見本を基に繰り返し稽古した。「何枚も何枚もやり直し、だんだん一枚にかかる時間が短くなっていった。器用じゃないんで、最初は大変でした」
 自治体主催のイベントやお祭りなどで経験を重ね、やがて寄席に。二十年前に三代目正楽を襲名、寄席のトリも務めた。「実はね、上がり症なんです。以前は高座に上がる前、吐くぐらいにドキドキしてた。それがなくなったのは、正楽になってからですね」
 三月には、芸術分野の優れた業績を表彰する芸術選奨の文部科学大臣賞に選ばれた。紙切り芸の分野では初めての栄誉。「寄席の高座に普段通り向き合っていて賞を頂いた。大変うれしいです」
 寄席の再開を心待ちにする。「振り返って、寄席を好きで良かった。高座だけでなく、落語家の師匠たちと顔を合わせる楽屋も勉強の場です。これから先も、若い人たちには負けたくないです」
<はやしや・しょうらく> 1948年生まれ、東京都出身。66年に先代の正楽に入門。2000年に三代目正楽を襲名。

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