<評>愛嬌生きる勘九郎 歌舞伎座「十二月大歌舞伎」ほか

2020年12月11日 07時28分

「傾城反魂香」の勘九郎(左)、猿之助((c)松竹)

 歌舞伎座は第三部「傾城反魂香(けいせいはんごんこう)」がおもしろい。中村勘九郎の又平は持ち味の愛嬌(あいきょう)がよく生きて、哀れさはありながらも陰々滅々としないのがいい。市川猿之助のおとくにもこまやかな情愛があって、似合いの夫婦。
 第二部は、古典落語の「星野屋」を題材にした新作「心中月夜星野屋(しんじゅうつきよのほしのや)」の再演。中村七之助のおたか、市川中車の星野屋照蔵。母お熊の市川猿弥が抜群のコメディーセンスで大いに笑いを誘う。
 第四部「日本振袖始(にほんふりそではじめ)」は一日から七日まで坂東玉三郎休演のため、尾上菊之助が岩長姫実は八岐大蛇(やまたのおろち)を、坂東彦三郎が素盞嗚尊(すさのおのみこと)を代わった。菊之助は、少年のようにも見える中性的な感触が独特で新鮮。彦三郎も芸風が役柄に合って爽快だった。中村梅枝の稲田姫。
 第一部は片岡愛之助、尾上松也の「弥生の花浅草祭」。二十六日(十八日は休演)まで。
 一方、「国立劇場十二月歌舞伎公演」は黙阿弥(もくあみ)物の代表作が並ぶ。
 第一部「三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)」は、「大川端」「吉祥院」「火の見櫓(やぐら)」という場割(ばわり)。中村時蔵のお嬢吉三、中村芝翫(しかん)の和尚吉三、尾上松緑のお坊吉三という三人の取り合わせのバランスがよく、芝翫が丁寧な芝居で因果にからめ取られる小悪党を巧(うま)く描き出した。坂東亀蔵の堂守、坂東新悟のおとせ、中村萬太郎の十三郎も好演。
 第二部「天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)−河内山(こうちやま)−」は、松本白鸚が当たり役の河内山を演じる。中村梅玉の松江出雲守が癇性(かんしょう)の強さとともに国守の品格と大きさを十分に見せて、まことに立派。
 舞踊「鶴亀」では中村福助が元気な姿を見せる。他に市川染五郎の「雪の石橋(しゃっきょう)」。二十六日(十五日は休演)まで。
 (矢内賢二=歌舞伎研究家)

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