話し合い、働きがい実感 コロナ禍、若者の地方移住の受け皿に<協同労働・現場から①>

2020年12月12日 06時00分
 先の国会で成立した労働者協同組合法が11日、公布された。2年以内に施行される。働く人が自ら出資し、運営に携わる「協同労働」の働き方に法人格を与える新法。これによって多様な事業が生まれ、地域活性化につながることが期待される。折しも新型コロナウイルスの感染拡大で地方移住への関心が高まり、協同労働の働き方を実践する地域の企業に魅力を感じる若い人が増えている。若者たちが働く現場を訪ねた。(石川智規)

都市部から移住し、みかんを収穫する「てんぽ印」の若者ら

◆仲間同士の意見交換が生み出すもの

 「自分のやってる仕事、おもしろい?」
 愛媛県西予市に広がる段々畑。146ヘクタールの敷地でミカン栽培と販売を営む「無茶々園」の大津清次代表(55)はことあるごとに職員に問いかける。「自分の仕事に意味を見いだせれば、予測できないような成長が見られると思うからです」
 事業を拡大・多角化するため無茶々園は約20年前に株式会社として設立された。その後、若者育成塾や介護施設なども創設。株式会社が各事業会社を束ねる形だが、職員の働き方や運営は協同労働の方式を採用するのが特徴だ。
 「ウチで働く人は営業職員も農作業をする人も『1人1票』。仲間同士がお金を出し合って、話し合う協同労働をベースにしたからこそ多様な意見が出て、ミカン作りや介護など『いろいろな事業をやろうよ』となった」

◆大阪から、東京から

 ただ過疎化した地域の活性化には若い力が必要だ。受け皿として2018年に設立されたのが有限会社「てんぽ印」。今、協同労働の働き方を採るここに若者が集まり始めている。
 20~30代の職員9人のうち5人が移住組。てんぽ印の村上尚樹代表(38)は「農閑期にはミカンの皮を使った加工品づくりなど、他の事業で給料を出せるようになった」と話す。
 協同労働の理念をもとに社員が意見を出し合い事業を拡大してきたからこそ、今では農閑期でも別の仕事を割り振ることができる。
 2年前に大阪府から移住した金沢彩瑛さえさん(25)は「人の多い都会暮らしから離れたかった。他の農村も見たけど、ここはいろいろな仕事ができるから続けやすい」。東京都江戸川区出身の酒井朋恵さん(35)も「仕事への取り組み方も人との距離感もちょうどいい」と話す。

◆歯車から抜け出して

 対等に意見を出し合う協同労働。だがそれだけで収益が上がるとは限らない。自らも千葉県から移住した無茶々園の細島毅専務(49)は「賃金が安く辞めていく若者もいる」と明かす。
 それでも「自分たちで意見を出したことが形になる協同労働をベースに働けるのは強み。東京では歯車の一つだったが、ここでは『働いている』という実感がある」と語る。 (協同労働の意義を現場から伝える記事を随時、掲載します)

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