<お道具箱 万華鏡>狂言「箕被」の箕 新婦に贈る習慣も

2020年4月24日 02時00分

大蔵彌太郎さんが生まれた時から家にあったという箕。幅34センチ

 「箕(み)」という道具をご存じだろうか。穀物の選別や物の運搬に使われる素朴な農具だ。その箕がタイトルロールになった「箕被(みかずき)」という狂言がある。
 人間というものは今も昔も変わらない。それは、ある夫婦の離婚騒動のお話。夫が連歌に熱中しすぎるので、妻が家を出ていくという。そのとき、別れの印に夫から妻に手渡されるのが箕なのだ。
 現代ではあまり見かけなくなった箕。舞台で使う箕をどのように入手しているのか。能楽師大蔵流狂言方の大蔵彌太郎(やたろう)さんに話を聞いた。
 「地方に行ったときに、ちょっと探したりしています。神社のそばの雑貨店で、買ったこともありますよ」。今は五枚くらいの箕があり、薪能など屋外の舞台では大きいもの、というふうに使い分けているそうだ。
 彌太郎さんが生まれた時から家にあったという箕を見せてもらった。竹を斜めに編んだ作りで、やや深め。裏側には装飾的な補強も。縁はつるのようなものが巻かれていて、いい飴色(あめいろ)になっていた。
 来歴を知りたいので、東京文化財研究所・主任研究員の今石みぎわさんに問い合わせてみた。今石さんが主催する「箕の研究会」に協力を呼びかけたところ、三重県を中心に京都や奈良でよく使われる「伊勢箕」と判明。補強の具合などから、非常に丁寧な作りの箕であることもわかった。今石さんは「箕は女性とつながりの深い道具で、新婦に箕を贈る習慣も。呪術的な意味をもつ道具でもありました」と言う。
 東京・国立能楽堂では、六月十九日に「箕被」(大蔵彌右衛門、大蔵彌太郎)の上演を予定している。結末は、ハッピーエンド。箕の背景を知ると、より深く楽しめそうだ。 (伝統芸能の道具ラボ主宰・田村民子)

2013年11月、「箕被」で妻を演じる大蔵千太郎(現大蔵彌太郎)=国立能楽堂提供

関連キーワード


おすすめ情報

伝統芸能の新着

記事一覧