霞ケ浦導水、工期7年延長 国交省が計画見直しへ 県負担187億円増

2020年12月12日 07時35分

霞ケ浦から送られてきた水を那珂川に放流し、那珂川の水をくみ上げて霞ケ浦に送る「那珂機場」=水戸市渡里町で

 霞ケ浦と那珂川、利根川を二つの地下トンネルで結び新たな水源確保を目指す「霞ケ浦導水事業」を巡り、国土交通省は年内にも事業計画を見直し、二〇二三年度に完成予定としていた工期を七年延長する。工期延長は五回目で、これに伴い総事業費は四百九十五億円の増加、県負担も百八十七億円の上積みになる見通し。だが、この巨大公共事業のそもそもの必要性を問う声は根強い。 (宮尾幹成)

■5回目

 国交省関東地方整備局によると、一部の地権者との間で地下利用のための地上権設定交渉がまとまっておらず、工事の詳細設計の見直しなどもあって、二三年度までの工事完了は難しいと判断したという。
 今回の計画変更に当たり、関係する茨城、東京、埼玉、千葉の四都県のうち、埼玉県と九十九里地域水道企業団(千葉県)は事業から撤退、千葉県(工業用水)と印旛郡市広域市町村圏事務組合(千葉県)は取水量減量を決めた。四都県とも既に計画変更に同意。茨城県は十一月十一日付で同意した。
 霞ケ浦導水は、利根川や那珂川の渇水対策や霞ケ浦の水質浄化を目的に、一九八四年に建設が始まった。
 二つの地下トンネルのうち、利根導水路(約二・六キロ)は八九年に完成したが、当時、利根川のシジミの大量死が発生。試験通水との因果関係が疑われた。現在は水資源機構が、首都圏への生活用水や農業・工業用水の供給に活用することを目指している。
 一方、もう一つの那珂導水路(約四十三キロ)の工事はこれまでに四回の工期延長を繰り返し、四割ほどしか進んでいない。
 この導水路を巡っては、茨城県と栃木県の漁協が二〇〇九年に建設差し止めを求めて提訴し、一八年に東京高裁で「霞ケ浦から那珂川への試験送水時に那珂川の水質を調査する」などの条件で和解が成立した。

那珂導水路の完成部分(霞ケ浦導水工事事務所提供)

■有害無益

 今回の工期延長で、総事業費は二千三百九十五億円に膨れ上がり、茨城県の負担も千三十八億円に増えると見込まれる。総事業費の増額は二回目。県は同意に際し、コスト削減や工期短縮を求める意見を付けた。
 国交省の計画変更方針を受け、住民グループ「霞ケ浦事業を考える県民会議」は赤羽一嘉国交相と大井川和彦知事に、事業の中止や撤退を求める抗議文や要望書を送った。浜田篤信共同代表=小美玉市=は、導水による霞ケ浦の浄化効果は皆無だとする中曽根英雄・茨城大名誉教授の調査結果などを挙げ、「県や県民に多大な経済的負担を強いる有害無益な事業以外の何物でもない」と訴える。
 共産党県議団は、水需要が低下する中で新たな水源開発は必要ない▽霞ケ浦浄化につながらず、那珂川や利根川の生態系に悪影響をもたらす▽莫大(ばくだい)な税金投入による県民負担を招く−などと指摘し、事業から撤退するよう大井川知事に申し入れた。
 国会で事業の中止を訴えてきた福島伸享(のぶゆき)元衆院議員=水戸市=は、着工から百三十年以上も工事が続くスペイン・バルセロナの著名な教会建築になぞらえて「まさに茨城のサグラダ・ファミリア。国交省の職員を養うために、不要な事業に予算を付け続けているのが実態だ」と批判する。
 その上で「中止して浮いた予算を、那珂川水系の治水事業や霞ケ浦周辺の下水道事業などに充てれば、かなりのことができる」と提案する。

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