<ふくしまの10年・母と娘 自主避難という選択>(5)分からない不安

2020年12月12日 07時56分

震災後、給水場に並んだ人たち=福島県いわき市で

 福島県いわき市から愛知県豊川市に移って二年、三年とたち、根本美佳さん(51)の生活は軌道に乗り始めた。ただ、小学校に通う一人娘の未結(みゆう)さんの体を案じる気持ちは消えなかった。「いわきで被ばくさせたかもしれない」と思っていたからだ。特に心配だったのが放射性ヨウ素による甲状腺内部被ばく。チェルノブイリ原発事故で甲状腺がんが多発した原因とされる。
 いわきの自宅は福島第一原発の南五十キロ。避難区域から外れた。自主避難を選択したが「娘の体は大丈夫」と確信を持てなかった。
 政府は二〇一一年三月二十三日、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の推計結果を公表した。同日までに甲状腺内部被ばくが一〇〇ミリシーベルトに達した可能性のある地域は原発から南にも広がり、根本さんの自宅近くまで伸びた。
 汚染の拡散前に避難すれば被ばくは防げるはずだった。しかし十一日の震災後、停電で原発の情報が入らなかった。給水場などに行くため未結さんと屋外に出る時間も多かった。避難の開始は十五日。原発で既に三度の爆発が起きていた。
 避難を選択したことで、「娘といわきの友だちを引き離した」と負い目があったが、避難が遅れたという後悔も持ち続けてきた。
 実際の被ばく線量はのどに測定器を当て、甲状腺に集まる放射性ヨウ素の量をつかむことで確認できる。しかし政府が調べたのはなぜか千八十人だけ。未結さんは対象から漏れた。
 放射性ヨウ素は量が半分になる半減期が八日と短い。数カ月で消え、後から測ることができない。「被ばくの程度が分からないから娘が心配になる。もう被ばくさせちゃいけないと思うから避難を続けようと考える。きちんと測ってくれればもっと楽に過ごせた」
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