<新・笑門来福 笑福亭たま>元の世界に戻るまで

2020年4月17日 02時00分
 ついに大阪府や東京都などに緊急事態宣言が発令された。「外国のロックダウン」と「日本の自粛要請」というのは、根本的には同じだと最近気づいた。前者は医療従事者や生活必需品販売業などの「絶対必要な職業」と、それ以外の職業に分ける。後者はエンタメ業者などの「不要不急な職業」と、それ以外に分ける。どちらの政策も全職業を「今必要かどうか」で判断し、国民を自宅待機させる作戦だ。
 外国のロックダウンはお医者さんを「この人たちは絶対必要なんです!」と選ぶスタイルで、日本の自粛要請は、落語家に「この人たちは今ホンマに不要なんです!」と叫ぶスタイルだ。そして日本では感染者が増加するにつれ、「その次に不要なんはコイツや!」と増やしていくスタイルだ。実際「ライブハウス! イベント! 水商売! カラオケボックス!」と細かく名指しである。ロックダウンと自粛要請は、どっち側寄りで線を引くかだけであって、必要度で分けるという意味においては同じだ。エンタメ業は医療従事者や食物生産者などに比べ、生存に必要かどうかで多数決を取れば圧倒的に負ける。
 落語家的に言えば、落語家はお医者さんよりは、ずっと「しょうもない仕事」だと思う。しかし本当に不要かというとそうではない。おすし屋さんで「ガリ」を全く食べずにおすしを食べるのは可能だろう。だが、毎回全員が「ガリ」を食べないですしを食べなければならなくなったら寂しいはずだ。感覚的にはそれと一緒だ。さらには誰かにとっての落語や音楽は自分の生きがいや最大の欲求になることもある。昔、私の親戚がかなり高齢で糖尿病だったのだが、まんじゅうが食べたいと言った時に「食べさせたったらええやん」と「体に悪い」で議論をした。その時のまんじゅうと一緒で、命にかえても味わいたいと思うエンタメも人によってはあるかもしれないのだから。
 しかし今は世界全体が本当に極限状況である。例えて言えば映画や漫画の「荒廃した近未来」で、村人がせっかく収穫した農作物を悪者が奪うというシーンがよくあるが、そこでもし皆が一生懸命畑仕事をしているのに、横で「一席お笑いを…」と言うやつがおったらドツかれると思う(笑)。今はその状況なので皆さま、自己予防の上、できるだけ自宅待機してください。元の世界に戻るまで。

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