モネ「睡蓮」へ、美の返歌 日本画家の平松礼二さん 3年かけ14点屏風絵

2020年12月13日 07時34分

モネの池に北斎の雲を映らせた作品を解説する平松さん

 印象派の巨匠クロード・モネを研究する鎌倉市の日本画家平松礼二さん(79)が、国内最大級の超大作「睡蓮(すいれん)交響曲」を三年がかりで完成させた。十四点の屏風(びょうぶ)絵の連作で、高さ二メートル、総延長九十メートル。葛飾北斎らの浮世絵を愛したモネが大装飾画「睡蓮」(同九十一メートル)で表現しようとした美への返歌、返画という。日本画の視線と画材で新たな睡蓮が花開いた。 (西岡聖雄)

「ジヴェルニー池の水鏡」

 平松さんは一九九四年、モネの大装飾画をパリの美術館で見て足がすくむ。西洋絵画の大原則、遠近法ではなく睡蓮や池の近景が描かれ、時や季節の移ろい、花鳥風月も絵の中にある。日本の絵巻物、折り曲げれば屏風になると思った。
 なぜ、日本画と共通点が多いのか。以来、何度も現地へ行き、モネや印象派を研究。点描のような光の輝き、モネの美意識に敬意を払い、コピーではなく、日本画の感性と手法で再解釈する創作に没頭していく。
 睡蓮交響曲はその集大成だ。海を超えるカラフルな睡蓮のほか、桜やモミジ、竹林、柳とそれぞれ競演する作品もある。鮮麗な色彩、水墨画のような画面、扇状の波で永続性を表す伝統的な青海波文様(せいがいはもんよう)で池を囲む屏風もあり、日本美術の装飾性と遊び心をちりばめた。唯一写実的な青い池の作品は、躍動的な光と風を感じさせる。
 当初は長さ百メートルの連作を目指したが「先輩の影を踏まず」と、モネの大作より一メートル短くした。赤い富士を描いた北斎の代表作「凱風快晴(がいふうかいせい)」のいわし雲をモネの池に浮かべた作品には「北斎の雲が池に映ったら、天上のモネさんはどう思うかなと問い掛けた」と笑う。
 作品を見た武蔵大の小山ブリジット教授(比較芸術、比較文学)は「フランス的な発想のカタツムリも描かれうれしい。モネが生きていればどれほど喜んだことか」と絶賛した。
 作品は来年三月五日〜六月二十八日、前後期に分け町立湯河原美術館で展示する。コロナ禍が収束すれば海外でも公開される見通し。

「睡蓮とさくら協奏曲」=いずれも湯河原町で

<海外で脚光を浴びる平松絵画> 2013年にフランス・ジヴェルニー印象派美術館の招きで個展を初開催。鉱石や貝殻、金粉、墨などを使い、世界で最も美しい絵の具とされる日本画材も紹介し、過去最多の入館者(7万4000人)を記録した。美術館は出品新作を全て購入するほど熱を入れ、18年にも個展を開いた。ドイツ・ベルリン国立アジア美術館も14年に開催した。日本側の売り込みや場所貸しを除き、海外の公立美術館が現代日本画を評価し、自主的に展覧会を開くのは極めて珍しい。現代日本画を世界が注目する契機になった。

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