<新・笑門来福 笑福亭たま> このご時世に…ツッコミまくり!

2020年3月20日 02時00分

残りわずかになったトイレットペーパー…

 タクシーに乗った時に運転手さんがサービスで何かくれることがある。ティッシュや飴(あめ)やガムなど、さまざまだ。先日タクシーに乗車したら、運転手さんがポチ袋を渡してきて「中は小さい小さい折り鶴です」と言うてきた…。思わず、「今、新型コロナウイルスで危ないと言うてるのに、メチャクチャ手でこねくりまわした折り鶴をくれるんですか!? 濃厚接触やないか!」と思ったが、もちろん口には出さなかった。
 これが普通の日常なら「へぇー、ちょっとした気遣いですね」と言うのだろうが、「いやいや、今の状況わかってる? お客さまへの気遣いなら、ここはトイレットペーパーでしょう! タクシーでもらえたら笑えるし、一ロールでもうれしいし、あるいは除菌シートとか。このご時世に折り鶴は逆に非常識やろ、どういうことやねん」と思った。
 しかし、私はポチ袋をカバンに入れながら「ありがとうございます」とだけ言い、「ここでツッコまないことこそ、気遣いだ…。けど、アカンて考えたらわかるやろ」と心で思った。もちろんその運転手さんが折り鶴を渡す時に今の時世を気遣って「大丈夫ですよ。ちゃんと手をアルコール消毒してから折りましたんで」とか言うても「いやいや! それも違うし!」になるが。
 一斉休校やイベント自粛の政府の要請について「今は戦時中と同等だから国民が一致団結してこの国難を乗り越えるべきだ。根拠とか言わずに安倍首相についていこう」みたいなことを言う人がいてビックリした。「今が戦時中」ではなく「その考え方が戦時中や」としか思えない。第二次世界大戦の反省を全く生かしていない。科学とか論理とか根拠を無視する姿勢は国難を乗り越えるどころか、「玉砕でも構わない」ことになる。安倍首相についていくかどうかは別にして「根拠とか言わずに」というのが問題だ。
 一方でお客さまに「満員電車に皆乗ってるんやから、全員落語会に出かけても一緒やて思ってほしいんです!」という芸人がいて驚いた。そこは満員電車になっていることを問題視すべきだと私は思うのだが、「満員電車で感染するかもわからんから、落語会で感染しても一緒やん!」みたいな結論にいくとは思わなかった。ある意味、これだけ多種多様な考えの人がいれば、どんな形で感染するかはもうわからない。皆さま、ご自身で予防対策を。
<しょうふくてい・たま> 1975年、大阪府生まれ。98年に京都大経済学部卒業後、笑福亭福笑に入門。古典も新作も手掛け、「ショート落語」という小噺(こばなし)集も高座に掛ける。

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