<お道具箱 万華鏡>文楽のかんざし 素材にも工夫の跡

2020年3月27日 02時00分

「義経千本桜」(2011年2月の公演、国立劇場提供)

 文楽の人形は、小さなかつらをつけている。人間がかぶる歌舞伎のかつらと、似ているところも多いが、異なることもある。たとえば文楽では、かつらを釘(くぎ)で頭部に打ち付けて固定するが、もちろん歌舞伎ではやらない。
 銀色の大きなかんざしをさすお姫様のかつらも、近いようだけどやっぱり違う。ちょうど「義経千本桜」に登場する静御前のかしら(人形の頭部)を準備しているというので、大阪・日本橋にある国立文楽劇場で、床山の高橋晃子さんに話を聞いた。
 静御前は凜(りん)とした若い女性で、源義経の愛妾(あいしょう)。厳密に言うとお姫様ではないが、「姫十能(ひめじゅうのう)」という典型的な姫のヘアスタイルをしている。鴇(とき)色の蝶(ちょう)があしらわれた大きなかんざしは、「姫の花櫛(はなぐし)」という。これは前髪を覆うように深めにさすのが決まりとなっている。
 面白いのはその素材。銀色の小花は金属ではなく、紙。軽くする工夫だ。ピラピラした短冊は、素材が変化してきているという。「以前は紙でしたが、折れ曲がってしまうんです。それで、アルミにしたのですが、これも問題があって、人形に当たるとそこが黒くなってしまうんです。今はステンレス製にしています」。道具も、現場の人が試行錯誤しながら、よりよい方へ変化させているのだ。
 ちなみに、歌舞伎の静御前は「吹輪(ふきわ)」という名称の髪形。まげの形や飾りが少しずつ違うので、機会があれば見比べてみるのも楽しいかもしれない。筆者は、文楽のほうが、古風でちょっとおぼこいように感じる。
 さて「義経千本桜」は、四月に大阪・国立文楽劇場、五月は東京・国立劇場で上演予定。人形の髪は、高橋さんたち床山が人形の顔立ちに合わせて、気を配りながら結い上げている。髪にもご注目を。
 (伝統芸能の道具ラボ主宰・田村民子)

静御前のかしら

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