<芸道まっしぐら>落語 林家たま平 多芸生かし愚直に

2020年3月13日 02時00分
 曽祖父は七代目林家正蔵(一八九四~一九四九年)、祖父は「爆笑王」の初代林家三平(一九二五~八〇年)、父も人気者の九代目正蔵(57)。スター落語家の家系に育った二つ目の林家たま平(25)は父祖と同じ道を歩んでいる。精進を重ねる中で、意外な分野との交流も巧みに取り込むなど、器用さも持ち合わせる。
 例えば、ラグビー。東京・明大中野中学・高校での経験を買われ、昨年は社会人ラグビーチームの奮闘を描いたTBS系ドラマ「ノーサイド・ゲーム」に出演。そこで共演した元日本代表の主将、広瀬俊朗さん(38)とは独演会にゲストで登場してもらうなど懇意になった。「広瀬さんのキャプテンシー(統率力、指導力)や人を引きつける力を学びたい」と貪欲な姿勢を見せる。
 そんな柔軟性は芸事に親しむ環境で育ったから。小さい頃から日本舞踊やピアノを習い、その後、三味線も。それでも、噺家(はなしか)を志したのは“血”だろうか。高校卒業の際、父に入門を願いでたら、「そう簡単におまんま食える商売じゃないぞ」と二回断られた。「親子の縁を切っての入門。落語の道の厳しさ、言葉の重みを感じ、覚悟した瞬間です」
 師匠から教わったのは「味噌豆(みそまめ)」の一席だけ。すぐに「ほかに行って勉強しなさい」と追い出された。厳しく接しても、どうしても甘えが出る…。父・正蔵も通ってきた道。若き日の苦労は必ず高座に生きる。言葉に出さず背中で示す正蔵は、ただひと言「真っ正直に生きなさい」。その言葉は修業の支えになっている。
 古典の滑稽噺「道灌(どうかん)」を口伝で教えてくれた柳家小里(こり)んをきっかけに、柳家さん喬、古今亭志ん橋、柳亭小燕枝(こえんし)…。実力派たちの門を次々とたたいた。師匠たちの厳しくも温かい指導は身に染みた。高座で披露できる演目は約六十席になった。幼少期からたしなんだ芸も生きている。日本舞踊で学んだ所作は「殿様や女性の表現で、フッと心持ちを変えた時に生きてくると思う」。独演会も積極的に開き、開花し始めた独自の芸に磨きをかけている。
 昨年はドラマだけでなく、映画にも出演。それも山田洋次監督の「男はつらいよ50 お帰り寅さん」だ。介護士役で「こんにちは」の一言が言えず、緊張のあまりOKが出ない。山田監督から「なんで君をキャスティングしたか分かるかい。ありのままの君が好きだから選んだんだよ」と諭され、ハッとした。「素の魅力ですね。スーッと力が抜けました」。三十回撮り直して、宝物を得た。
 愚直に生きる日々が芸の底力になっていると感じる。「お客さまと一つになれる空間を作るのが使命です」。ワンチームでつくる高座を目指し、奮闘は続く。 (神野栄子)

名古屋・大須演芸場で開いた独演会で熱演する林家たま平(昨年11月)

●こんな一面も●

 ◇リフレッシュタイム スイーツを食べながら、1人でオンラインゲームを楽しんでいます。負けると絶叫することも。時間があればボクシングジムで汗も流します。
 ◇癒やされる時 三味線の音色や茶の湯などに心が和みます。ほかに、ピアノを弾いている時も。
 ◇異空間 20歳のころ、姉に誘われて宝塚の舞台を初鑑賞。こんなにもきらびやかな世界があるのかと驚きつつも、異空間を純粋に楽しんでいる。ほかの芝居も好きです。
<はやしや・たまへい> 1994年5月29日生まれ。東京都出身。2013年4月、父・九代目林家正蔵に入門。17年11月、二つ目に昇進、18年3月に東京・三越劇場でお披露目の高座。舞台などでも活躍中。5月7日、東京・府中の森芸術劇場で独演会、広瀬俊朗さんが登場予定。

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