<若者たちのSDGs>アイディアと行動力で人がつながる街づくり

2020年12月15日 11時19分

学生主導のまちづくりで注目を集める「さがまち学生Club」
学生たちの活動をヒントに、皆さんも自分にできるSDGsを考えてみませんか。

(左から)目白大学3年・石﨑知佐さん、相模女子大学4年・北之園優希さん、相模女子大学4年・田中綺乃さん、相模女子大学4年・横山美佳さん

◆世代を超えた協働が活動の原動力に

 大学が多く集まる学生の街、神奈川県相模原市と町田市。2007年、2市の大学と地域が連携し、地域活性を目指して「相模原・町田大学地域コンソーシアム(略称=さがまちコンソーシアム)」を設立。2013年には、同団体を母体に“学生の力で街を盛り上げる”をコンセプトに掲げた「さがまち学生Club」の活動が始まった。現在、メンバーは13名。地域情報誌「Sagamachi」や地元企業PR動画の制作、地域イベントへの参画、子ども食堂との協働など、多岐にわたる活動の企画から運営まですべてに携わる。

学生たちが制作している地域情報誌「Sagamachi」。現在25号まで発刊

 今回、取材に応じてくれたのは、メンバーの田中綺乃さん、北之園優希さん、横山美佳さん、石﨑知佐さん。横山さんが学生クラブへの参加を決めたのは「自分の大学がある街をもっと知りたかった」。一方、田中さんは「私は情報誌が作りたくて入った。メンバー全員、自分の興味や得意を活かして活動している」。情報誌「Sagamachi」は、学生目線で、地元の魅力を掘り起こす。そのクオリティーの高さには、メンバーの本気がにじむ。

現在推進中のSDGsプロジェクト。SDGsを実践している地元企業などへの取材や学生クラブ内でワークショップを企画・実施した

 「取材で多くの人と会ううちに、人をつなげて街を盛り上げたい気持ちも強くなった」「人とのつながりが財産になる活動」と目を輝かせるメンバーも。その言葉通り、情報誌が一つの実績となって、学生クラブには、行政や地元企業からの依頼も舞い込むようになった。「相模原市オリジナル出生届のデザインは面白かったな」「児童虐待防止リーフレット制作は、市役所の方と仕事するのが楽しかった!」。世代も立場も異なる人たちと一つのものを作り上げる楽しさも味わったという。「皆さん、私たちの意見や発想を大切にしてくれる。どんなアイデアも最初から“否定されない”ことが嬉しかった」と北之園さんは笑顔を見せる。

◆SDGsは興味あることを楽しみながら

 2018年から、学生クラブの活動に新たなテーマが加わった。それが「SDGs」だ。神奈川県のSDGs普及事業の一環として、SDGsの講義を受け、自分が興味を持ったゴールをテーマに企画・実施、WEBからレポート発信を行った。「最初はピンと来なかった」というメンバーも、SDGsゴール14『海の豊かさを守ろう』に取り組むために、江の島海岸で清掃を行うと「冬の海なのにゴミが多くて驚いた。拾ったゴミをアート作品に再利用できないかと考えた」。ゴミの再利用は、ゴール12『つくる責任 つかう責任』にもつながるアクションだ。「一つ活動を始めてみると、複数のゴールが見えてくることも。17のゴールはつながっている」と石﨑さん。これまでずっと、まちづくり活動を行ってきた学生クラブ。その意味では、すでにSDGsに取り組んでいたのでは?そう聞くと、全員が頷き「好きで続けていた活動がSDGsにもなっていた」「特にゴール11『住み続けられるまちづくりを』をやってきたと思う」。

SDGsゴール14『海の豊かさを守ろう』に取り組むために、江の島海岸で清掃活動を実施

 次なるステップとして情報誌でSDGsの特集を組んだ。SDGsに取り組む地元企業や飲食店への取材、さらにSDGsを“自分ごと化”するために「いらないハギレを使ったボタン作り」などのワークショップを実施し、レポートを掲載。特集に対する反響は大きく、近年のSDGsへの関心の高まりを実感したという。今後の活動にも意欲を見せるメンバーに、SDGsを日常的に実践するためのヒントを聞いた。

福祉施設でのブース企画・出展など、地域イベントへの参加も

 「SDGsを意識した商品は増えている。その商品を使うだけでも関わっているのでは」「17のゴールに向けて頑張ろうではなく、自分の興味あることから始めることで楽しく続けられる」。そして最後に「難しく考えずに、まずはやってみる!」。若者たちの好奇心と行動力が未来を変える力になる。
◇さがまち学生Club WEBサイト
https://sagamachi.jp/club/

◆学生たちをサポート!地域を学生たちの成長を育む場に

さがまちコンソーシアム事務局課長・江藤佑さん

 さがまち学生Clubを語る上で欠かせないのは、メンバーを支える大人世代の存在だ。さがまちコンソーシアム事務局の江藤佑さんと、学生クラブのディレクターを務める村上由朗さんは、設立時から深く関わってきた。サポートにおいて大事にしていることは、「学生の主体性を尊重し、大人は強制しない。もう一つ、地域に開かれた活動になるよう、どの活動も行政や企業などとの協働を大切にしている」。江藤さんは「近年は、SDGs関連の依頼も多い。SDGsはこれからのキーワードになるのでは」と言いつつも「それも学生次第かな。あくまで主役は学生たち、私たちが企画を進めることはないですから」と見守る立場に徹する。

株式会社デスケルデザイナー/さがまち学生Clubディレクター・村上由朗さん

 これまでずっと、週一回、定例会議を行ってきた学生クラブ。対面で議論し合うことで活動の充実を図ってきた。コロナ禍でもオンラインで会議を行ってきたが、「オンラインだと相手に考えが伝わりにくく、大変だったろうと思う」と村上さん。それでも、活動は止めなかった。現在は、オンラインでの発信に力を入れている。
 学生クラブを始めて約7年。今、お二人が感じることは、「地域そのものが学生の成長を支える場になってきている。これからも地域のステークホルダーと協働し、街を盛り上げていきたい」。学生たちの熱量を支え続ける。

【SDGs コラム】若者たちのSDGsをローカルからグローバルへ

相模女子大学 学芸学部 英語文化コミュニケーション学科 相模女子大学大学院 MBA社会起業研究科 教授・九里徳泰さん
<のり・のりやす>冒険家として世界80か国を冒険し、その経験から環境・CSR(ESG、SDGs)経営の提言を行う。また、富山市政策参与として環境未来都市プロジェクトを推進。

 さがまち学生Clubの活動は「ローカル」ですが、地球規模で目指すSDGsが加わることで、一気に「グローバル」へ接続できます。視点を変えるだけで視野が広がり、自分たちの活動の重要性が際立ってくるのです。SDGsがまだ遠い国の話に思える若者には、まずは17のゴール、169のターゲットを一つずつ読み解き、自分にできそうなことを発見することから始めてもよいでしょう。そのうち「本当にできそうなことを一つだけやってみる」という一点突破もお勧めです。
 一つ一つのターゲットを読み違えず、正しく理解するのも大切なこと。そのためにもSDGs教育が必要ですが、世界的に見ても、その本質を学べる場が少ないのが実状です。私は現在、地方創生などを教えていますが、そこに「SDGs」を加えて、10年後に結果や評価が得られるような教育プロセスを踏みたいと考えています。社会課題に実質的に立ち向かえる人材育成を目指していきたいです。
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企画・制作/東京新聞

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