<座間事件判決>白石被告の凶行の源泉は解明されず…真理に迫る裁判員審理を

2020年12月15日 18時52分
神奈川県座間市の9人殺害事件があったアパート=2017年

神奈川県座間市の9人殺害事件があったアパート=2017年

 <解説>初公判から感じた白石被告の「普通」さと、犯行の残虐性との乖離かいりは、判決理由を聞いても埋まらなかった。
 被告の供述は理路整然として一貫性があり、犯行に至る経緯は筋道が通っていた。だが、わずかな金と一瞬の性欲のために殺害と遺体の解体を繰り返した短絡的思考と良心の欠落は、どこから来たのか。被告の母親は「どこにでもある普通の家族」「隆浩に何が起きたのか知りたい」と語った。被告の凶行の源泉は何か。答えは一連の審理の中にはなかった。
 解明されるべき事実は他にもあった。被告の自宅近くで複数の被害者の携帯電話の位置情報が途切れたことを、警察は逮捕前から把握。被告による遺体解体を目撃した女性の存在も公判で判明した。捜査当局の対応次第で助けられた命があったかもしれない。その検証は十分されていない。
 市民が参加する裁判員制度の開始から11年。裁判員の事実認定と量刑判断の負担軽減のため、法廷での証拠調べや質問は簡略となり、審理の効率化、スピード化が進んだ。結果、被告の情状面の審理は深部まで至らなくなっている。
 裁判は法の適正執行だけでなく、事件の再発防止に向けた真相究明も重要な役割だ。白石被告の望み通り一審判決で確定した場合、私たちはこの事件を克服し、社会正義を実現できたと言えるか。裁判員の負担にも考慮しつつ、真理に迫る公判の在り方を模索する時期に来たのではないだろうか。(沢田千秋)

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