シカのケープ君どうなった? 保護から半年、動物園でモテまくっていた

2020年12月16日 10時20分

ケープは首の下の毛が長い。寒い地域から来た?

 6月、足立区の河川敷に1頭のシカが現れた。保護された後に「殺さないで」の声が相次ぎ、動物園に引き取られたことで話題になった。あれから半年。「ケープ」と名付けられた彼はどうしているのだろう。「これは会いに行くシカない」と近況を確かめに行くと、雌ジカにモテまくっていた。
 緊急事態宣言が全面解除されてまもない6月初め、荒川の河川敷で、野生とみられるシカが網やドローンを使って保護された。殺処分の可能性があると報道されると、区に「殺さないで」「引き取りたい」とメールや電話が700件寄せられ、区が引き取り先を探した。

◆「この命をどう扱うか」園長の決意

 いくつかの動物園が「病気を持っていないか心配」と断る中、千葉県市原市の山あいにある民間動物園「市原ぞうの国」が快く迎え入れた。坂本小百合園長(71)は「この命を大人がどう扱うか子どもたちも気にしている」と決断し、エスケープ(逃亡)してきたからと「ケープ」と名付けた。

坂本小百合園長

 飼育下に慣れる第一歩として、ケープはバックヤードに建てられた専用の小屋で生活を始めた。「隙があれば逃げようとしていた」(坂本園長)が、栄養をしっかり取り、体長は保護時の1.5メートルから一回り大きく成長。推定2歳。ふんを鑑定したところニホンジカと判明した。では出身地は? 園は「体毛が長いから北の方から来たのかな」と推測するが、たシカなことは分からなかった。

◆細マッチョなのに…ギャップ萌え

 野山で育ったとみられるケープは体格が良く、筋肉が程よく付いた「細マッチョ」。ワイルドながら飼育員に簡単に気を許さないシャイな一面もあり、そんなギャップに雌ジカたちがえないわけがなかった。
 飼育員によると、11頭いる雌ジカは年上ばかり。ケープが来園した日は「若いイケメンが都会から来た」と言わんばかりの熱視線を送り、その夜はいつもと違うトーンの鳴き声が夜通し響いた。ケープもまんざらではなかったのだろう。クールに見つめ返していたという。

ケープの来園当日の雌ジカたち(市原ぞうの国提供)

◆だるまさんが転んだのように

 奈良公園のシカはフレンドリーだが、本来は警戒心が強い動物。ケープも新生活に慣れてきたとはいえ、人間への警戒心は解いていない。取材のため近づくと寝床に逃げ込まれてしまった。撮影は一時中断。シカたなくカメラマンはケープがお気に入りの飼育員菅野あすかさん(23)にくっついて、だるまさんが転んだのように1歩ずつ近づいた。

警戒心は解いていないが、飼育員の菅野あすかさんはお気に入り

 バックヤードを出るにはもう少し今の環境に慣れる必要があり、一般公開まではしばらくかかりそうだ。坂本園長は「エサを手から食べられるようになるまではね。ケープ次第としか」と話し、焦らず見守っていく方針。来年3月の展示のリニューアルに合わせ、ケープが負担にならないような仕掛シカけを準備している。

◆「何かの暗示か」ざわつくSNS

 ケープが出没した河川敷は鹿浜橋の近くで、対岸の地名は足立区鹿浜。二十三区にシカが現れること自体が珍しいのに、現れた場所がシカにちなんでいるなんて! SNSなどでは「偶然とは思えない」「何かの暗示か」とざわついた。
 鹿浜の地名の由来について、足立区立郷土博物館は「はっきりと伝わっていない」とした上で、「シカが群がる水辺だった説もある」と説明。古文書には江戸時代に将軍が冬にシカを狩りに来ていた記述があり、この地にシカが生息していたと推測できる。
 学芸員の荻原ちとせさん(56)は「ケープのおかげで、みんなが地名の由来に思いをはせる機会になった」と喜んだ。かくかくシカじかありながら、幸いけが人も出ず、不安が渦巻くコロナ禍で気を紛らわせてくれた、と言ったら保護に駆け回った人たちにシカられるか。
 文・加藤健太/写真・由木直子
 ◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へ。

関連キーワード

PR情報

TOKYO発の新着

記事一覧