認知症対応、企業は学ぶ 金融業など研修増加 「安心して選ばれる店舗に」

2020年12月16日 07時57分

神谷さんから認知症の人への対応方法を学ぶ行員ら=愛知県春日井市で

 2025年には65歳以上の5人に1人が患っているとされる認知症。金融機関や小売店など、日ごろ高齢者と関わる機会が多い企業を中心に、認知症の研修を取り入れる動きが加速している。目指すのは、認知症の人に適切に対応し、安心して利用してもらえる「認知症にやさしい企業」だ。 (植木創太)
 「八十代の女性が通帳の再発行を申し出てきました。この半年間で四回目。再発行したばかりと伝えても、覚えはないと言います。どうしましょう」
 十一月中旬、愛知県春日井市の十六銀行春日井支店で閉店後にあった認知症の「ONEアクション研修」。講師を務める県地域包括ケア・認知症対策室の神谷ともみさん(49)の問い掛けに、同支店の行員ら二十人が「まずは丁寧に話を聞く」「緊張させないよう、いつも同じ職員が対応する」などと答えていく。
 研修は、県が九月から始めた独自の企業向けプログラム。金融機関や公共交通機関、スーパーなどで起こりうる状況を想定し、対応時の心得三つとポイント七つ=図=も含めて四十五分で学ぶ。同支店では、認知症とみられる高齢者が「カードをなくした」と連日訪れ、対応に困ったばかりだった。窓口担当の山田由美子さん(47)は「実際に経験した状況だったので考えやすかった」と語る。
 窓口での預貯金引き出しなどには、厳密な本人確認が欠かせない。認知機能が低下した顧客の場合、手続きができず、トラブルになる恐れもある。一方で、認知症の人が保有する金融資産は三〇年に二百十五兆円に達する見込みだ。研修を企画した支店長の福井基泰さん(50)は「認知症になっても安心、と顧客に選んでもらえる店舗となることが大事。朝礼などで対応事例を共有する機会も設けていきたい」と話す。
 地域で認知症の人や家族を支える「認知症サポーター」の養成を後押しする全国キャラバン・メイト連絡協議会(東京)によると、認知症の研修を取り入れる企業は年々増えている。〇五年以降、六十〜九十分の講座を受けた認知症サポーターは累計千二百六十万人。うち企業・団体の受講者は二割を占める。最も多いのは金融業だが、〇七年から新規出店や店舗改装時などに実施しているイオングループ(千葉市)を筆頭に、小売業界でも拡大中。高齢者世帯の増加に合わせて、マンション管理業界での開催も多くなっている。
 今年は新型コロナウイルスの影響で、全体の講座開催数は昨年の五分の一ほどに減っているが、オンラインで開いた企業は少なくない。政府が昨年まとめた認知症施策推進大綱で、認知症対策に取り組む企業の認証制度を検討するともされており、自治体主催や住民向けに比べて需要は高いという。
 ただ、企業では組織改編や異動で受講者が職場を離れることもよくある。毎年の新入社員教育の中で認知症の研修を行うなど、継続して取り組んでいくことが必要だ。協議会によると、これまでに対応力の向上を図る「ステップアップ研修」も受けたサポーターは全体の一割程度にとどまる。事務局長の菅原弘子さんは「講座で学んだことを定期的に振り返り、見直していくことも大切。職場で対応を共有したり、考える機会も設けて」と呼び掛ける。

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