冷めない出前の保温材、実は車の断熱材…コロナ禍で転用、広がる採用

2020年12月16日 14時25分
 新型コロナウイルス禍でフードデリバリー(出前)の需要が伸びている。感染リスクを抑えながら、お店の味を自宅などで手軽に楽しめるのが利点だが、「届いたら冷めていた」との苦情も。そんな課題の解決につながる、効果が長持ちする保温材が、専門業者の間で出回り始めている。その名も「HEAToGo(ヒートゥーゴー)」。温かさの秘密は自動車部品大手、住友理工(名古屋市)が手がける断熱シートにある。(曽布川剛)
 「初めて利用する方からは、『本当に温かいまま届くんですね』という声をいただく」。出前専業ライドオンエクスプレスホールディングス(東京)の細谷信太郎エグゼクティブマネジャーが、保温材のすごさを強調する。「銀のさら」「釜寅」などを全国で約740店舗展開。コロナ禍で法人需要は減ったが個人需要が急増し、本年度の利益目標の9割近くを上半期だけで稼ぎ出した。
 注文が増える中でも配達要員を確保し、温かいまま届ける出前品質を重視し続けた。ただ配達バイクに入れる保温材は、効果が1時間程度しか続かず、頻繁に店に戻って取り換える必要があり、通常より配達時間がかかる場合もあった。
 そこで夏ごろから、日用雑貨のエステー(東京)などが開発したヒートゥーゴーを、首都圏で展開する宅配代行サービスの一部で導入した。
 保温の肝になっているのが、高温の宅配用カイロ(縦13センチ、横9・5センチ)を2つ入れるパッドの素材に使われる住友理工開発の高断熱シート。熱が伝わらない性質を持つ粉状の化学材料「シリカエアロゲル」を、主力の車向け防振ゴムなどで培った高分子材料の配合技術でシート状にした。
 カイロの熱がパッドから逃げるのを防ぎ、保温効果を持続させる。もともと、車の天井に張る断熱材などに使って車内温度を管理し、電力使用量を抑えることを想定して開発した。幅広い業種での活用を目指す中、保温製品メーカーの目に留まった。

効果が長持ちする保温材「HEAToGo」をバイクにセットする配達スタッフ=東京都内で

 ヒートゥーゴーを使えば、85度の食事なら30分後も70度以上に保つ。従来は1時間程度しか続かなかった保温効果が8~10時間持続するため、ライドオン社も店に戻らず何件も連続した宅配が可能になった。顧客を待たせない上、温度に関する苦情の減少が期待でき全国展開する釜寅などでの導入も検討する。
 個人事業主向けの販売も検討している。他にも、全国で約70店舗のイタリア料理店を展開する「サルヴァトーレ クオモ」のピザ宅配も採用を予定しており、普及が加速しそうだ。

◆出前市場の成長加速 求められる品質向上

 国内のフードデリバリー市場は、米「ウーバーイーツ」が2016年に参入して競争が激化する中、利便性も向上し、売上高が伸びている。調査会社エヌピーディー・ジャパンによると、市場規模は年5%前後の伸びを続け、2018年には4000億円を突破。さらにコロナ禍で5月が前年比3倍、6月は2倍、7月以降も2~7割増と成長が加速している。
 一方、エステーが11月に利用者600人を対象に実施したウェブ調査では、6割以上の人が届くのが遅い、料理がかたよっていた、など何らかの不満を感じていた。特に料理が冷めていた経験のある人は55%おり、うち64%が温め直したと回答した。顧客満足度を上げるには、宅配品質の向上が必須となる。

PR情報