「学術会議の独立性が破壊される」 自民PTの提言に会員や研究者から批判噴出

2020年12月17日 00時20分
 自民党プロジェクトチーム(PT)は日本学術会議を政府から独立した独立行政法人や特殊法人などに移行させるのが望ましいとする提言を11日に井上信治科学技術担当相に提出したが、会員や研究者らからは批判が噴き出している。(望月衣塑子)

宇山智彦・北海道大教授(本人提供)

 会員で北海道大の宇山智彦教授は「非政府組織でも権威や影響力のある提言ができる社会的・政治的土壌がある欧米と違い、日本で会議が政府機関でなくなれば、今以上に政府から軽視される。行政法人化すれば、監督官庁から指示を下され会議の独立性は破壊される」と指摘する。
 その上で「研究機関ではない学術会議では委託研究で自主財源を獲得するのは不可能で、それをやるには専従の研究調整スタッフを雇うなどの投資が必要になる。組織形態を変えれば何かの問題が解決するというのが幻想であることは、迷走する大学改革が示す通りだ」と疑問視する。
 日本は国立博物館・美術館を独立行政法人化し国立大の法人化も進めてきた。

佐藤康宏・東大名誉教授(本人提供)

 任命拒否を受け文化庁の会議座長を辞任した佐藤康宏・東大名誉教授も「法人化は職員のさらなる多忙を生んだ一方、毎年削減される運営費交付金を補うほどの資金獲得は不可能である。民営化・法人化が見かけの効率化を生んでも、それと引き換えに失われるものは重大だ。会議を国の直営から外す意義はない」と話す。
 さらに「会議自体は研究機関ではないので、委託研究による競争的資金の獲得はあり得ない。国庫で負担すべき仕事に、会員や各学会からの会費徴収というのも考えられない」と批判。PTが「政策のための科学の機能を十分に果たしているとは言い難い」と指摘した点にも「会議は多くの政策提言を行っている。問題はそれを受け止める政府の姿勢にある。政府が、どう受け止め対処してきたのかをこそ検証すべきだ」と話す。
 事の発端となった任命拒否問題を無視した形での提言についても「問題のすり替えだ」との声が上がる。

栗田禎子・千葉大教授

 会員の栗田禎子・千葉大教授は「政府が会議に何らかの要求をするには、法的根拠が必要だが、今回の動きには法的根拠がない。PT提言の最大の特徴はPT発足自体の経緯について、完全に沈黙していることだ。提言は1年くらいで『会議法を改正する』ことを狙いとするが、これは菅義偉首相による任命拒否が『会議法違反だ』と指摘されたので『それなら会議法を替えてしまおう』という態度に出ているということ。これが看過されるなら、日本における『法の支配』も終わりだ」と厳しく批判する。

久保亨・信州大特任教授

 PTの提言には「専門分野別の分科会等は廃止し、テーマ別にプロジェクトベースで委員会を設置し議論するあり方が望ましい」とある。元会員の久保亨・信州大特任教授は「プロジェクトとは課題を絞り設定されるもので、学問全体をカバーするような系統性は持ち得ない。プロジェクトに関わらない専門分野の学問的知見や、学会活動が無視・軽視されることになり、会議が会議法2条の『わが国の科学者の内外に対する代表機関』たり得なくなる」と訴える。「提言が『独立性の担保は大前提だ』とするなら、まず6人の任命拒否を撤回し、会議の推薦に従い、6人を任命するところから議論を始めるべきだ」と批判した。

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