命あるうちに解決して…アスベスト被害者の切なる願い 原告の7割以上が死去「早期救済制度を」

2020年12月17日 06時00分

最高裁判所

 「最高裁の判断はとてもうれしい。でも提訴から10年以上が経過し、多くの仲間が亡くなった。国には裁判をせずとも救済される制度をつくってもらいたい」
 原告の宮島和男さん(91)は16日、本紙の電話取材に応じ、国の賠償責任を認めた最高裁決定を喜びつつ早期の救済制度創設を求めた。
 熱や摩擦に強い石綿は、かつて建物の断熱材や車のブレーキパッドなど多くの工業製品に使用された。しかし世界保健機関(WHO)が1972年、発がんの危険性を指摘。欧州は80年代にかけて使用量を大幅に減らしたが、日本は高度経済成長期からバブル期の90年代にかけても使い続けた。日本で石綿の使用が原則禁止になったのは2004年だ。

◆1000人以上の原告、7割が亡くなる

 石綿関連疾患は、吸い込んでから発症するまで十数年から50年かかるとされる。今も石綿が原因で亡くなったとみられる人は多く、呼吸器疾患に苦しむ人は増え続けている。
 元労働者らが国と建材メーカーに損害賠償を求めるきっかけになったのが、08年に起こされた今回の訴訟。以降、全国各地で1000人以上が原告となったが、弁護団によると7割以上が亡くなっている。
 これまでの同種訴訟で地裁や高裁の大半が国の賠償責任を認め、今回最高裁も追認した。

◆国は早期救済制度を

 大阪市立大の除本理史教授(環境政策論)はこうした状況を踏まえ「司法判断が積み上がっている中で、最高裁が重みのある判断をした。今後の訴訟への影響は大きいだろう」とみる。
 原告団の小野寺利孝弁護団長は「石綿被害者たちは『命あるうちに解決してほしい』と切に願っている」と訴える。
 立命館大の森裕之教授(公共政策論)は「最高裁は今後、メーカーの責任も踏まえた統一判断を示すだろう。国はこれまで責任を認めてこなかったが、被害に遭った人たちを早期に救済する制度の検討を始めるべきだ」と指摘した。(山田雄之)

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