<寄席演芸の人びと 渡辺寧久>被写体の個性に乗る 演芸フォトグラファー・武藤奈緒美 

2020年12月18日 07時38分

選び撮る瞬間を、私が選ぶ。構図とか型を決めちゃうと飽きられる」と話す武藤奈緒美

 「相手の個性に乗っかって撮ること。そうすればそのつど、違う写真になる」
 演芸フォトグラファー武藤奈緒美(47)の、それが撮影流儀だ。「武藤さんの写真っていつもこれだよね、って言われたくない。型はなくていいんです」
 やわらかい写真が芸人に気に入られ、「加速度的にポートレートの注文が増えました」と手応えを明かす。
 大学卒業後、写真スタジオ勤務を経て、「私、成り行きでなっちゃった」と二十九歳でフリーに。「テーマの模索をしていたとき」に、演芸情報誌「東京かわら版」から表紙の撮影依頼が舞い込んだ。二〇〇四年十一月号から、演芸写真家としての経験値を積み上げ始めた。
 武藤にはもうひとつ、着物の知識、着付けの経験値がある。自身も着物好きで「十五分で着られます」。着物撮影の依頼も多い。
 「特に新二つ目さんは、宣材撮影のときに初めて黒紋付(もんつき)を着る。着付けのバランスが分かるのが強み」
 来春、落語協会で新真打ち五人が誕生する。三遊亭粋歌(すいか)改メ弁財亭和泉、柳亭市江改メ柳亭燕三(えんざ)、柳家小太郎改メ柳家〓三郎(きさぶろう)、春風亭正太郎改メ九代目春風亭柳枝、三遊亭めぐろ改メ三遊亭れん生(しょう)。宣材撮影のスタジオは和やかな空気に包まれていた。
 「誰かを目立たせてはいけない。全員に平等にピンが当たらないと」という姿勢で集合写真、個別写真を次々に収める。三本のレンズ、二台のカメラを駆使し、約三時間で七百枚ほど。
 「それを半分以下にセレクトし、その中から芸人さんが選びます。さらに色や明るさ、サイズをパソコンで調整し、納品は基本ダウンロードしてもらいます」という流れで芸人の手元へ。
 人物撮影が圧倒的に多い、という武藤の仕事。
 「二十年後に見てもいい写真だねって言われるような、普遍性を求めて撮り続けたいですね」(演芸評論家)
※〓は七3つ

来年の新真打ち5人を撮影。「撮りながらコミュニケーション」という武藤(左)。対話と笑いがスタジオを包む

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