新型コロナで民間救急「今が限界」…無症状や濃厚接触者の移動手段、搬送数は倍増

2020年12月18日 14時00分

感染防止のために車内をビニールで覆う「民間救急 フィール」代表の斉藤さん=東京都日野市で

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、コロナ患者を医療機関や宿泊療養先に搬送する民間救急の需要が増している。重症者の対応に追われる医療機関や行政を補完する形で、感染者の大半を占める軽症や無症状者らの欠かせない移動手段となっている。(土屋晴康)

民間救急 救急車で搬送するほどの緊急性はない患者を医療機関などに送迎する有料のサービス。赤色灯やサイレンを使った緊急走行はできない。正式名称は「患者等搬送事業」で、一定の要件を満たした事業者を各自治体の消防本部などが認定する。

◆依頼が殺到「今が限界」

 「11月に入ってからひっきりなしに電話がある。コロナ患者の搬送は準備や消毒などの手間がかかる。今が限界だ」。感染者の搬送を手掛ける「民間救急 フィール」(東京都日野市)代表の斉藤学さん(37)はそう話す。
 軽症や無症状者を療養先のホテルや病院へ、濃厚接触者をPCR検査のために病院へ搬送する。保健所からの依頼が8~9割を占める。1件当たりの費用は約10万円だが、個人や企業からも依頼がある。
 最近は軽症者が入院を希望しても、宿泊療養に回されることも増えている。ホテルへ搬送した軽症者が、その日のうちに症状が悪化して病院に再搬送するようなケースもある。

◆搬送数は倍増、追われる感染対策

 同社は11月、コロナ患者143人を搬送した。10月と比べて搬送数は倍増した。「最近は土日や祝日も関係なく依頼が来る」(斉藤さん)。コロナ患者を搬送できる車両は三台あるが、搬送前に車内をビニールで覆う飛沫対策をし、搬送後に入念な消毒が必要なため、これ以上は搬送できないという。
 アズマ民間救急サービス(東京都三鷹市)は11月、50~60件の搬送依頼があった。10月に比べて2割ほど増えており、対応できずに断ることもあった。担当者は「以前は20~30代が多かったが、今は50代以上が多くなっている。最寄りの病院でなく、30分や1時間ほどかかる遠い病院に搬送するケースも増えた」と話した。

◆コロナ対策は必須、搬送請け負うのは一部

 東京消防庁によると、都内で270の事業者が「民間救急」の登録をしている。だが、通常の業務とは異なり、感染症対策が必要なため、コロナ患者を搬送するのは一部にとどまる。
 東京防災救急協会によると、東京民間救急コールセンターに登録する事業者95社のうち、搬送を請け負うのは15社ほど。コロナへの不安やこれまでの固定客が嫌がることなどが理由だ。

◆安易な参入、感染広げる恐れ

 一方で、コロナ患者の搬送需要の高まりで、業者が安易に参入してくることを心配する声もある。民間救急フィールには「ノウハウを学びたい」という問い合わせが増えているが、斉藤さんは「不十分な装備で搬送すればクラスター(感染者集団)を招きかねず、業界の信用にもかかわる。感染防止の装備基準などを行政が考えてくれるとありがたい」と話す。
 全国約25の民間救急業者でつくる全民救患者搬送協会の内田真史・統括本部センター長(33)は「加盟社は結核などの感染症を想定して訓練をしている。福祉タクシーなどが民間救急に参入するケースがあるようだが、十分な安全対策が取られていないと、搬送の際の感染が心配だ」と話した。

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