<ふくしまの10年・母と娘 自主避難という選択>(10)新たに歩み出した道

2020年12月19日 06時34分

新たな道を歩む根本美佳さん(右)と一人娘の未結さん=福島県いわき市で

 今年十月、記者は福島県いわき市を訪れた。根本美佳さん(51)と一人娘の未結(みゆう)さん(16)に会うためだった。自主避難に区切りを付けてから三年半。記者はその後もたびたび電話で連絡を取っていたが、顔を合わせるのは三年ぶりだった。
 フラガールになりたいという娘の夢をかなえるため、「本場」のいわき市に帰ることを根本さんは選択した。しかし最近、予期しなかった方向へ話が進んでいると教えてくれた。
 未結さんは帰還後、中高一貫校に通い出した。フラダンス部があったためだ。その一方で勉強にも力を入れ、中学三年までに英語検定と漢字検定、数学検定の三級を取得。今年四月に高校生になって特進コースへ進むと、医療関連の道を目指すことにしたという。
 「直接、誰かの役に立つのは、けがした人を助けるのが一番かなと思って。ママも医療とか介護とかの仕事をしてきたから」。そう話した未結さんに対し、根本さんは「私はショックでしたよね。何のために帰ってきたのって」と苦笑交じりで振り返りつつ、「それでも本人が決めたことだし、悩んだ末のことだと思うから、新しい夢を応援しています」と述べた。
 原発事故後の生活は紆余曲折(うよきょくせつ)ばかりだった。避難先で感じた孤立感。似た境遇の人たちや恩人との出会い。娘が歩み出した新しい道。コロナ禍で勤め先は規模縮小を迫られ、仕事を辞めた。それでも、根本さんは前を向こうと考えている。「避難していた時、つらいことも多かったけど、普通なら一生かけても出会えないような良い人たちと巡り会い、人の優しさにも触れました。娘の姿にも励まされました。私も誰かのために頑張りたい、あの時の恩返しをしたい。今はそう思っています」 =おわり
(榊原崇仁が担当しました)
 ◆22日から新シリーズを始めます。
 ◇ご意見はfukushima10@tokyo-np.co.jpへ

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