イージス代替艦 失政のツケを回すな

2020年12月19日 06時36分
 政府はミサイル阻止を巡り「地上イージス」に代わる新しい方針を閣議決定した。敵基地攻撃能力の保有は見送られたが、イージス・システム搭載艦の新造は妥当なのか。引き続き検証が必要だ。
 そもそも、地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」(地上イージス)計画は、軍事的な合理性よりも、安倍晋三前首相が、米国製武器の購入を求めるトランプ米大統領に配慮した色合いが強かった。
 秋田、山口両県の陸上自衛隊演習場内への配備に向けた調整は、地元住民や自治体の反対に遭い、迎撃ミサイル発射の際、ブースターという初期加速装置を演習場内に確実に落下させることができないことも判明し、断念に追い込まれた。
 それに伴い政府・与党が検討、決定したのが「新たなミサイル防衛システムの整備」など、新しい安全保障政策の方針である。
 安倍氏や自民党は、これを機に相手のミサイル発射基地などを攻撃する「敵基地攻撃能力の保有」を求めていたが、新方針は「抑止力の強化について、引き続き政府において検討を行う」との表現にとどめている。
 敵基地への攻撃について、歴代内閣は憲法が認める自衛の範囲内としつつ、実際に攻撃できる装備を持つことは「憲法の趣旨ではない」としてきた。政府が現時点で保有を見送ったことは妥当だ。
 ただ新方針は、相手の射程圏外から攻撃できる長射程の「スタンド・オフ・ミサイル」の開発方針も打ち出した。来年度から五年かけて開発に取り組み、地対艦誘導弾の射程を現行の百数十キロから九百キロ程度に延長するという。
 自衛官の安全を確保しつつ、日本への侵攻を試みる艦艇を効果的に阻止するためとしているが、射程が延びれば、敵基地攻撃への転用も可能になる。専守防衛に反しないか、慎重な検討が必要だ。
 地上配備の予定だったイージス・システムを搭載するための艦船を新たに二隻建造するという。地上イージスは当初、海上自衛隊の負担軽減が目的とされていたが、海上配備への回帰は当初の説明と矛盾するのではないか。
 地上用レーダーを艦船に積む異例の転用で少なくとも五千億円とされた地上イージスを超える巨費を要する可能性も指摘される。
 コロナ禍対策で多額の予算を必要とする中、ずさんな計画の代償を国民に支払わせる責任を、誰がどう取るのか。菅義偉首相は国民に対して明確にすべきである。

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