10年かけて復活したのに… チュニジアの観光産業、コロナで大打撃 「昔に逆戻り」「今年は地獄」

2020年12月21日 05時50分

12月上旬、軒並み閉まった土産物店を前に嘆くカフェ店員の男性。観光客は一人もいない

 2010年末に始まった中東の民主化運動「アラブの春」の混乱で低迷し、10年近くかけて回復したチュニジアの観光産業が、新型コロナウイルスの影響で再び大きな打撃を受けている。2年前に運動以前の水準を超えるまでに回復し、さらなる観光客増を目指す中でのコロナ禍に、観光業者からは「また昔に逆戻りだ」とため息が漏れる。(チュニジア・シディブサイドで、蜘手美鶴、写真も)

「観光客はゼロだ」と嘆くシャリーフ・ハーティムさん。開店するのは2軒のみ

 首都チュニスから東に車で40分、地中海に面した観光地シディブサイド。小高い丘の上には土産物店が数10軒並ぶが、シャッターが開いているのは2軒のみ。うち1軒の店主シャリーフ・ハーティムさん(60)は「コロナ前は1日60台は観光バスが来たのに今はゼロだ。やっと観光客が戻って来たのに…」と嘆いた。
 政府によると、昨年は約950万人がチュニジアを訪れたが、今年春以降は他国と同様に新型コロナの影響で激減した。10月以降もコロナの新規感染者は右肩上がり。午後8時以降は外出禁止で、観光再開のめどはたたない。アマル観光相は11月、今年の観光収入が昨年比62%減になる見込みを明らかにした。
 アラブの春で独裁政権が倒れた11年、年800万人近かった観光客は570万人まで落ち込んだ。15年には、イスラム過激派による観光客を狙ったテロで60人が死亡。欧州からの大型クルーズ船の来港は途絶え、観光客の足はさらに遠のいた。
 政府は主力産業を立て直そうと欧州各国に積極的に自国を売り込み、ここ数年は復調。20年は「1000万人以上」と野心的な目標を掲げるまでに回復しただけに、新型コロナによる打撃に落胆が広がる。
 特に懸念されるのが失業者の増加だ。観光産業では約40万人が働き、19年の国内総生産(GDP)の約14%を占める。もともと失業率が15%前後で高止まりする中、チュニジア観光連盟によると、約2万7000人が職を失う危険があるという。
 「今年は地獄だ」―。シディブサイドに隣接するカルタゴ。ローマ遺跡で有名なこの町でも、カフェ店員アフィフィ・ハンディさん(50)が「もともと経済が弱いのに、コロナがとどめを刺した」と漏らした。

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