<回顧2020>政治主導の東京五輪延期 存在感なかったスポーツ界

2020年12月20日 22時18分

東京五輪について記者たちの質問に答えるJOCの山下泰裕会長(手前)=3月23日、東京都新宿区で

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、東京五輪の1年延期が決まった。前例のない決定に至る過程は政治主導で、日本スポーツ界の存在感のなさが浮き彫りになった。

◆延期決定の場にJOC会長の姿なし

 3月24日、当時の安倍晋三首相と国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長との電話会談。同席したのは大会組織委員会の森喜朗会長、東京都の小池百合子知事、橋本聖子五輪相、当時の菅義偉官房長官だった。五輪の行方を決める重要な場にもかかわらず、IOC委員であり、日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長の姿はなかった。
 海外選手は会員制交流サイト(SNS)で延期・中止を求めるなど、積極的な意思表示をして、各国・地域のオリンピック委員会に影響を与えてきた。それにより、当初は延期を否定していたIOCも方針転換を余儀なくされたのだ。
 だが、開催国である日本のスポーツ界から声は上がらず、存在感がなかったのではないか。本来なら五輪開幕を迎えた7月下旬、山下会長に問い掛けた。

◆80年モスクワ五輪ボイコット時の涙はどこに…

 「それはいろんな人から言われました」。山下会長は時に不器用と思えるほど本音で答える。「ただね、東京五輪はアスリートのためだけではない。JOC、スポーツ界のものでもない。多くの税金が投入され、50年、100年に一度の国家プロジェクト。自分のことだけを考えるのではなく、みんなで力を合わせなきゃ」。選手目線よりも、「政治家」と歩調を合わせているように聞こえた。
 そして、JOC会長に就任して間もないことを挙げ、「今この状況で、ポッと出では力になれないなと。その気持ちの方が強い」と続けた。
 日本がボイコットした1980年モスクワ五輪で、涙ながらに五輪参加を訴え、選手の思いを政治家に伝えようとした、あの面影はない。40年がたち、日本選手団を統括するJOCのトップとなった山下会長の言葉を聞き、寂しく、むなしさが募った。
 延期決定から約9カ月。新型コロナの感染拡大は収まらず、先行きは不透明なまま。何のための五輪か。アスリートの価値とは。リーダーの役割は。これまで以上に考えさせられた2020年だった。(森合正範)

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