<新型コロナ>統計からはじかれる「隠れ休業者」 労働わずかでも「従業者」に分類 雇用危機の実態見えづらく

2020年12月21日 05時50分
 新型コロナウイルス禍が長期化する中、ほとんど休業と同じなのに統計の区分から外れた「隠れ休業者」の苦境が続いている。表面上の休業者数は4月に異例の約600万人を記録した後に平時の水準に戻り、雇用危機は見えにくくなった。実際には多くの人が失業と背中合わせの危機感を抱えたまま、年の瀬を迎えようとしている。(渥美龍太)

旅行会社のホワイトボードには、週1日の出勤曜日だけが書き込まれている=東京都新宿区で

 「水曜日」―。富士国際旅行社(東京)で従業員の予定表に使うホワイトボードには、出勤の曜日がひと言書き込まれ、あとはほぼ空欄だった。一部役員を除く従業員13人全員が毎週1日だけ出勤し、それ以外は休みという意味だ。
 4月以降の売り上げは平時と比べて9割を超える減少が続き、仕事はわずか。会社は従業員に休業手当を支払って休んでもらい、国の補助制度「雇用調整助成金(雇調金)」で手当の原資をまかなっている。
 太田正一社長(52)は「旅行業そのものが消えかかっている。雇調金が頼り」と危機感を隠さない。従業員の西須 輝理さん(34)は「先が見えない不安は強いけど、好きで入った会社を支え続けたい」と前を向いた。
 同社の従業員は週5日のうち4日は休む形だが、休業者とは呼ばれない。政府が毎月発表する労働力調査では、月の最終週に1時間の仕事をするだけで「従業者」に分類されるからだ。
 休業者数は4月に597万人に増えた後に平時の水準(10月・170万人)に戻った。しかし平時ならほぼ使われない雇調金の申請は、12月も週5万件超。社会保険労務士の藤浦隆英氏は「最近は全休ではなく、一部だけ休ませる申請が多い」と説明した。
 労働者に11月後半の勤め先の状況を聞き取った連合の調査でも、「休業していた」と0.7%が回答したのに対し「一部休業していた」は6.1%と8倍以上。従業者に分類される一部休業が多いことがうかがえる。
 労働政策研究・研修機構の中井雅之氏は「統計上は休業者から従業者に移行した人も、詳細に分析すれば必ずしも就業時間の回復などの中身を伴っていない」と指摘。女性や非正規労働者の苦境が目立つという。

◆休業手当ゼロのケースも

 また労働力調査では、賃金や休業手当が全くなく、もらえる見通しが立たない人も休業者に含まれない。会社の都合で従業員を休ませた場合、手当を支払うことが休業の前提だからだ。
 だが、首都圏のスーパーなどで試食販売の仕事をする河合美智子さん(62)は「3月以降は仕事がなく無収入で、休業手当も全く出ない。年金や夫の収入が頼り」と話す。こうした「休業手当ゼロ」の相談は今も各地の労働組合に寄せられている。
 政府は企業負担を軽減するための雇調金の特例を来年3月から徐々に縮小するなど、雇用政策の修正を検討中だ。日銀元審議委員の木内登英氏は「政策修正の時期や内容を適切に判断するには、隠れた休業者など統計に表れにくい雇用状況をできる限り把握していく作業が必要」と話す。

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