手作り”どこでもトイレ”街を走る! 障害者の声たくさん乗ってます
2020年12月21日 12時00分
屋外イベント時にトイレに困る車いすの障害者らのために、トヨタ自動車(愛知県豊田市)と住宅設備機器メーカー「LIXIL」(東京都江東区)がモバイルトイレ(移動式トイレ)を開発した。車でけん引して移動できる“どこでもトイレ”。パラアスリートを含む障害者らからヒアリングし、意見を反映させた。まだプロトタイプ1台だけだが、障害者の外出機会の増加につながることが期待される。 (加藤行平)
◆車がけん引、公道もOK
全長5.3メートル、幅2.5メートル、最高地上高2.9メートル。昨年秋から製作を始め、今春完成。ほぼ全体が手作りという。糞尿車として車両登録済みで、車にけん引して公道の走行も可能だ。
開発費は未公表だが、障害者の声を踏まえたきめ細かい設計が施されている。
出入りは斜度3度のなだらかなスロープで。車内は2室に分かれ、前室は着替えなどに使用するベッド付きの準備スペースに。便器を設置したトイレスペースは車いすが回転できる空間を確保した。
◆感染対策もばっちり
車いすの車輪を触ることが多く、感染症のリスクを抱える障害者が手を洗いやすいように、2カ所に洗面台を設置。洗面台は車いすでより近づけるように、台の下に足の部分が入るように工夫した。緊急呼び出しボタンは転倒時も想定し、床に近い箇所など2カ所に備える。体温の調節が難しい障害を考慮し、エアコンを付けた。
水はタンクに200リットル搭載し、汚水もタンクに貯蔵。外部からの電源だけでなく蓄電池も備え、約30回使用可能だ。
◆パラ選手の自信作
ヒアリングに参加したLIXIL社員の長島理さん(41)は、世界ランキング11位のパラバドミントンの選手でもある。千葉大大学院で物質化学工学を専攻。社内でトイレの開発を担当しながら、東京パラリンピックを目指す。
「一般的な多目的トイレと遜色なく、シックなデザインでとても落ち着けます」と長島さん。「細かい調整を重ね、多くの人に満足してもらえるトイレができた」
先天的に手足のまひがあり車いす生活の東京都西東京市の高校生、鱒渕羽飛さん(18)もヒアリング対象者の1人。横浜市で開かれたお披露目会でトイレを体験後、「洗面台が使いやすく、使用後に全身をチェックできる鏡があるのがうれしい」と話し、「外出機会が増える」と歓迎する。
◆イベント時に出動!
建物などには多目的トイレが併設されるようになってきたが、屋外ではまだまだ障害者が使えるトイレが少ないのが実情だ。長島さんも鱒渕さんも「外出先のトイレの有無が行動の基準となる」と訴える。
モバイルトイレについて、両社は花火などの屋外イベント時の設置を想定。商品化は当面予定せず、イベント時に障害者に体験してもらい、改善につなげる。
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