コロナで急減 保健所のHIV検査 「キット使い自分で」

2020年12月22日 07時14分

愛知県庁舎で実施された、自分でHIV感染の有無を調べる試み

 各地の保健所で無料、匿名で受けることができるエイズウイルス(HIV)検査。新型コロナウイルスの感染者対応で保健所が多忙となる中、検査を休止する例が相次いでいる。適切な治療を受けるには、早期に感染を知ることが不可欠。医師らは危機感を募らせており、キットを使って自分で検査をしてもらう試みも始まっている。 (細川暁子)
 名古屋市は四月上旬の緊急事態宣言発令後、HIV検査の休止を決めた。背景には、希望者が多く集まることによる新型コロナ感染拡大への懸念もあるが、保健所の手が回らなくなったことが大きい。これまで検査は市内十六の保健センターで平日に実施し、昨年は延べ約七千人が受けた。だが、現在は外部に委託している日曜だけ。平日の検査は来年一月から月一回だけ各センターで再開予定だ。
 休止は各地に広がっており、厚生労働省エイズ動向委員会によると、四〜六月の全国の検査数は九千五百八十四件。前年同期比の四分の一に激減した。
 HIVは主に性的接触が原因で感染する。感染すると免疫力が低下。体内でHIVが増え、特殊な肺炎や悪性腫瘍など国が定める二十三の病気のどれかにかかった状態がエイズの発症だ。医学が進歩した近年は、薬を飲み続ければ普通の生活を送ることが可能だが、発見が遅れると、エイズを発症したり、気付かずに性交渉を重ね感染者を増やしたりする危険が大きい。
 昨年報告されたHIV感染者とエイズ患者は計千二百三十六人と三年連続で減少。半面、発症して初めて感染に気付く「いきなりエイズ」は全体の三割程度の数字が続いており、コロナ禍前から早期発見が進んでいるとは言いがたい。
 名古屋医療センターエイズ総合診療部長の横幕能行(よしゆき)さんによると、これまで同センターを受診する患者は保健所からの紹介が二〜三割を占めていた。だが、新型コロナの流行以降は、高熱が続きコロナの疑いで受診した患者がHIVに感染していたり、息苦しさを訴えた患者がエイズの一つ、ニューモシスチス肺炎だったりした例もあった。
 HIV検査は病院によっては自費で受けることもできるが、一回六千円ほど。横幕さんは「このままでは感染拡大や、手遅れになる人が出かねない」と今月から、希望者が自分でできる無料の検査を試験的に始めた。財源には厚労省の新型コロナ対策に関する特別研究費約七百万円を充てた。

自分で指先に針を刺し、HIV検査ができるキット

 検査は匿名で受けられ、これまでに二回、愛知県庁舎で実施。計二十五人ほどが利用した。予約制で時間によって人数を制限するなど感染対策を徹底。訪れた人は、自分で指先に検査キットの針を刺し、ろ紙に血液を染み込ませる。それを封筒に入れ、会場内の箱に投函(とうかん)して終了だ。記者も体験したところ、針は少し痛いが、検査自体は二十分ほど。同じ日に検査を受けた男性(33)は「保健所での検査ができず不安に思っている友人が多い。いい取り組み」と話した。
 結果は、インターネットで予約IDとパスワードを入れると、数日後に確認できる。陽性の場合は病院であらためて確認の検査を受ける。横幕さんは「保健所の負担と密集による感染不安を減らす取り組みの一つとして全国に広めたい」としている。

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