障害者施設虐待 なぜ見抜けなかった

2020年12月22日 07時21分
 愛知県東浦町の障害者施設で入所者を蹴り、重傷を負わせたとして、元職員の男(45)が逮捕された。複数への虐待が見逃されていた疑いがある。障害者施設での虐待は全国的にも減る気配がない。
 入所者の男性=当時(54)=は二〇一九年七月、男に下腹部を蹴られ、三カ月後に病死した。この施設では一八、一九年に計四人が内臓損傷などで病院に運ばれ、男性を含む計二人が死亡している。
 男は「言うことを聞かないのでカッとなった。イライラして蹴った」と逮捕容疑を認めているといい、ほかの入所者にも暴行した疑いが持たれている。
 厚生労働省によると、障害者虐待防止法が施行された一二年以降も、虐待は右肩上がりの傾向にある。施設の職員らによる虐待は一八年度、前年度から三割増の五百九十二件で、被害を受けた障害者は七百七十七人に上る。うち二人は命を落としている。
 虐待防止法は、たとえ事実が確認できなくても、虐待が疑われた場合は必ず市町村に通報するよう義務づけ、合わせて内部告発者の保護を定める。施設側による隠蔽(いんぺい)や虚偽報告、証拠隠滅が相次いだことを受け法制化されたが、閉じられた空間になりやすく、自ら声を上げられない重度の障害者も存在することから、施設での虐待が見逃されている可能性は残る。
 今年三月には神戸市の精神科病院で元看護師ら六人が患者の顔に粘着テープを貼ったり、性的な行為を強制したりした疑いで逮捕されるなど、極めて悪質で組織的な犯罪行為も報告されている。
 厚労省は防止策として、第三者を入れた虐待防止委員会の設置や職員研修、市町村の立ち入り調査などを挙げる。介護現場からは職員の労働意欲や満足度、職員同士の人間関係や仲間意識が「虐待防止の鍵」との指摘もある。
 東浦町の事件では、男性ら二人が搬送された病院側が昨年八月に町に通報。関係者によると、防止法に基づき、入所者の支給決定をした二市が施設や病院から聞き取り調査したが、二市とも「虐待はない」と結論づけた。男は今年五月に別の虐待が発覚して七月に退職していた。
 男の逮捕を受け、愛知県は今月十五日、施設への立ち入り調査に踏み切った。二市の調査ではなぜ虐待と判断できなかったのか、ほかにも虐待はなかったのか、施設は適切な運営をしていたのか、徹底解明する必要がある。有効な再発防止策を見いだしてほしい。

関連キーワード

PR情報