<2020・かながわ 取材ノートから>(4)県の新型コロナ対応 命を守る姿勢、貫いて

2020年12月22日 07時25分

外出自粛を呼び掛ける黒岩知事。小出しな対策が目立った=県庁で

 一月十六日、県内で全国初の新型コロナウイルス感染者が確認された。二月十三日には八十代女性患者が死亡。同月三日からは横浜港沖に停泊したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号で感染者が相次ぎ、県内の医療従事者らが搬送を担った。同船の感染者は七百十二人に上った。
 県は感染者、死亡者、クラスター(感染者集団)発生を全国で初めて経験した。黒岩祐治知事は「県民の命を守るため、新型コロナ対策で神奈川県は全国をリードしている」と自賛する。実際、県は国よりも早く対策を打ち出すことが多かった。
 クルーズ船の対応では「災害医療」と捉え、災害派遣医療チーム(DMAT)に出動を要請して搬送先を調整した。その後、重症度に応じて病院に役割分担をしてもらい、臨時病床を全国に先駆けて建設。軽症・無症状者は借り上げたホテルで療養する「神奈川モデル」を立案した。患者が増加すると、濃厚接触者を特定する「積極的疫学調査」の簡略化や、県独自の患者入院基準をつくるなど、先手を打っていった。
 前例のないコロナ対応に対し、ひずみも生じた。対応に当たる県職員は、過労死ライン超の長時間残業が常態化。目が充血した職員が日増しに増える様子が見て取れた。宿泊療養施設では十二月十一日、五十代男性入所者が死亡し、対応に問題があったとして知事は謝罪した。
 経済活動との両立を迫られる場面ではちぐはくさも目立った。十一月以降、感染状況を表す七指標のほとんどが「ステージ3」(感染急増)に達しても、ステージ引き上げは判断しなかった。知事は「時短、自粛は誰もやりたくない」と述べ、「警戒宣言」を出したり「マスク会食」を呼び掛けたりしたが感染者は増え続け、結局十二月になって時短営業と外出自粛要請に踏み切った。
 「強いメッセージを出して感染増を抑える」ことを重視する知事が、最も端的に危機感を伝えられる「ステージ引き上げ」をしないのは、どう考えても異様だった。「その都度ベストな判断をしている」と知事は言うが、感染増が続いているのを見ると「ベストな判断」とは思えない。感染者は計一万五千人を超え、死者は二百二十九人に上っている(十六日時点)。
 ステージを引き上げなかった事情を問われた知事は「じくじたる思い」「県と国、政令市が一枚岩にならないといけない」と話した。思い切った判断ができない背景に、政府や政令市の意向があることを強くうかがわせた。横浜市は認めていないが、複数の県幹部が「ステージ引き上げに強く反対したのは、政府と横浜市だ」と断言した。
 とはいえ、県内の新型コロナ対策に関する権限は知事にある。国や県内自治体との調整も重要だが、「命を守る」という強い決意と、かけ声だけに終わらない内容のある対策を自らの判断で打ち出してほしい。 (志村彰太)

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