日本の車検証は「面倒な面倒見の良さ」 オンライン手続きできずイライラ…でも、公的書類は責任の所在が明確

2020年12月23日 06時00分
<デジタル後進国 英国赴任から戻ったら (中)自動車購入の壁>
 帰国後、転入手続きなどを済ませて自動車購入に乗り出すと、再び英国との違いを実感することになる。

◆まずは印鑑証明から…市役所、警察署を行ったり来たり

 まずは、非デジタルの象徴ともいえるハンコを持って市役所を訪れ、印鑑登録。印鑑証明を使って委任状を作成し、車検登録は自動車ディーラーに頼むことにした。ただ、車庫証明については、費用節約のため自ら挑戦した。
 駐車場の管理者から車庫の配置図や使用承諾書を受け取り、千葉市の町外れの警察署へ。申請書類を提出し、手数料は隣の窓口で収入印紙を購入。3日後に警察署を再訪して証明書を受け取り、車検のためディーラーに郵送した。
 「オンラインでできたらなあ」。ぼやかずにはいられない。警察庁に尋ねると、交通規制課は「ワンストップサービス(OSS)でオンライン申請ができる」ときっぱり。でも何かおかしい。必要な書類は、自動車の登録識別情報等通知書、電子化された保安基準適合証…。しかも、OSSは車検や登録、納税までを一括で行うため「車庫証明だけ」は不可能という。
 「これ、素人が手を出せるシステムなの?」。ディーラーに聞くと「一般人が簡単に入手できる書類ではない。個人が車庫証明をOSSで取得できるようになるには、だいぶ改革が必要では」とのことだった。
 こうして手にした車検証には、使用者、所有者の住所、氏名が記載。「この車は間違いなく私の所有」と公的に主張できる信頼性の高い文書となった。

◆英国では「車輌責任者」が所有者とは限らない

 英国では運転免許庁のウェブサイトで、名前や住所をオンライン登録すると車検証に似た車両登録証明書「V5C」が自宅に届く。名前も住所も自己申告で、取得のため証明書類を出す必要はない。ロンドンのディーラーは「V5Cは車両の『責任者』を示したもので、所有者とは限らない」と説明する。
 例えばロンドンでは車で中心部に入ると渋滞税を徴収される。行政は通りの監視カメラで車を撮影し、V5C上の人物に渋滞税を督促。スピード違反や駐車違反も同じだ。ここで、行政や警察にとって重要なのは、車が誰のものかではなく、責任をもって税金や罰金を支払うかどうか、なのだ。

◆日本の厳格な公的書類は、結果的にドライバーに優しい

 英国は、車の購入時という「入り口」では甘い。代わりに、税金や罰金の徴収は徹底され、行政機関から委託を受けた取り立て業者が自宅や職場までやって来て、責任を取らせる。
 翻って日本で車を持つには、印鑑証明や車庫証明など公的書類が必要で「入り口」は非常に厳格だ。責任の所在が明確化されるため、路上駐車などの違反や罰金逃れを未然に防ぎ、結果的にドライバーに優しいシステムとも言える。究極の自己責任論に立つ英国と比べると、日本の手続きは面倒な分、面倒見がいいのかもしれない。(沢田千秋)

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