苦しい時こそ社員を守る 新型コロナでも奮闘するキラ星の職場とは

2020年12月23日 17時00分

来店者らでにぎわう店内=浜松市北区三ケ日町の長坂養蜂場で

 新型コロナウイルスの影響で、企業の人員整理や賞与の大幅カットが続く中、従業員を守ろうとする職場が輝きを放っている。会社が苦しい時だからこそ、社員の努力に報いたいと特別賞与を支給したり、子どもの一斉休校に対応して有給休暇を優遇したり…。感染拡大に歯止めがかからず重苦しい年の瀬だが、きら星のような職場が各地にある。(久原穏)

◆感染防止で休業も顧客の心つかむ

 「お店が再開したら真っ先に伺います」「同封してあったミカンの花の香りに癒やされました」―。
 浜松市北区にあるハチミツ製品を製造・販売する「長坂養蜂場」。直売所には客からの感謝や激励のメッセージがあふれている。
 創業85年。三ケ日ミカンの産地で知られ、感染拡大前の週末は香り高いハチミツや加工品、大人気のハチミツソフトクリームなどを目当てに、県内外から約3千人の客が集まっていた。それでも従業員らの感染防止のため、緊急事態宣言が出る直前の4月、長坂善人社長(43)は直売店の休業を決めた。

お客から届いた励ましの手紙を持ち、笑顔の長坂善人社長=浜松市北区三ケ日町の長坂養蜂場で

 休めば従業員が受け取る休業手当は、給料の半分程度に減ってしまう。長坂さんは「休業手当の助成金はもっと困っている企業に回してほしい」とも考え、従業員40人全員に社内の通信販売などの仕事を担当してもらうことを決めた。

◆カイゼンで苦境に対応

 社長の配慮に従業員たちは仕事で応えた。感染しにくいドライブスルーで販売を始めるなど「カイゼン(職場改善)」を次々と提案。通販に同封するメッセージは、手書きで1件1件心を込めた。常連客には健康を気遣う言葉を送り、遠方の人には近くで摘んだ花を添えた。多くの返信が届き、感染が落ち着いた5月下旬に店を再開すると客足はすぐに戻った。
 長坂社長は大家族経営が信条。「家族だったらどういう制度があったら助かるか、どんな職場で働きたいか」を常に考えている。

◆犠牲を強いられる従業員が多い中で

 コロナ禍で解雇や雇い止めされた人は全国で7万人を突破。人員整理のため早期・希望退職を募る上場企業は90社を超えた。会社のために犠牲を強いられる従業員が後を絶たない。
 だが上場企業には、こんな例もある。TOTO(北九州市)は正社員のほか、パートや嘱託職員ら国内事業所で働く約1万5千人全員に一律5万円の特別賞与を支給した。
 2021年3月期決算で国内事業は減収減益の見通しだが、「コロナ禍で懸命に働いてくれる全ての働き手に感謝し、ねぎらいの気持ちを表したい」と従業員にメッセージを送った。

◆制度改善で働きやすくする企業も

コロナ禍に対応して拡充した「積立保存休暇制度」の申請を検討する女性社員=ダイニチ工業で

 石油ファンヒーターや加湿器のトップメーカー、ダイニチ工業(新潟市)は、期限内に取得できなかった有給休暇を別途積み立てる「積立保存休暇制度」を拡充。本来は長い入院などの際に利用できるが、コロナ禍で子どもが自宅待機になった場合にも使えるようにした。
 全国一斉休業となった4月以降、申請が続き、30代の女性社員は「保育園の休園がいつまで続くか全く見えなかった時に、有休を使い切ってしまうのは怖かったので助かった。安心して子どもの面倒をみることができた」と感謝した。

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