<いろいろありすぎた2020年 あれ、どうなった?>それでも走る 好きだから 消えた大会、市民ランナーは

2020年12月24日 07時07分

練習会で力走する「アトミクラブ」のメンバー。前方の黄色いシャツが河島亜紀さん=渋谷区で

 本来なら今ごろは市民マラソンの最盛期だが、今年はコロナ禍でずっとシーズンオフのまま。一方で「オンラインマラソン」なる新たな潮流も誕生。コロナ太りに甘んじる市民ランナーの端くれ記者がコロナ時代を駆けるランナーのリアルとバーチャルを追った。
 今月の寒い夜。渋谷区の代々木公園陸上競技場にランニングクラブ「アトミクラブ」の練習会を訪ねた。参加者は受付で手指を消毒し、検温。感染対策の誓約書も提出している。

練習の前には検温

 マスクを外すのは走る時だけ。接触機会を減らすため走るコースも分けている。さまざまな対策を議論し、緊急事態宣言解除から一カ月以上たった七月に練習会を再開した。
 十キロを走り終えた川崎市幸区の会社員・河島亜紀さん(45)は「大会がことごとくつぶれ、走るモチベーションがなくなったけど、練習会でみんなが頑張っているのを見ると刺激になる」と話す。仲間に再会した時は感激し「当たり前に走っていたことが当たり前じゃなかったと気付いた」という。
 武蔵野市の会社役員・吉木稔朗さん(66)は「ランナーにとって一番つらいのは大会がないこと」。それでも毎日走るうちに「大会や記録のためではなく、走ることが好きなんだ」と分かったという。
 専門誌「月刊ランナーズ」の黒崎悠編集長によると、子どもが手作りのゴールテープで親を迎える家族マラソンを開催したり、走ったコースを衛星利用測位システム(GPS)でお絵描きしたりと「大会という目標は失ったが、新しい楽しみを見つけたり、なぜ走るのか哲学的に考えたり、ランナーの前向きさ、自律性を感じた年だった」と振り返った。
 ◇ 
 リアル大会に代わり台頭したのが、走行距離、時間などを計測できるアプリを入れたスマホを持ち、決められた期間に決められた距離を走るオンライン大会。三月に名古屋ウィメンズマラソンが導入し、一気に広まった。大会事務局の担当者は「二月に発表した時は『何それ?』だったが、完走率が88・6%と高くて驚いた」という。
 多くのオンライン大会ではTATTA(タッタ)というアプリが使われている。大会の申し込みができるサイト「ランネット」を運営するアールビーズが、コロナの影も形もなかった四年前にリリースした。ランナーの多くが持つランネットのIDに連携させられるのが他社アプリにない特徴だ。
 「以前は大会前々日までの練習距離を競うのに使うくらいだったが、名古屋以降、年内だけで百十のオンライン大会、イベントが生まれた」と同社の高瀬晋治さんはニーズの高さを説明。ダウンロード数は二月末の十三万四千から三十四万に急伸した。
 在宅勤務期間に月間三百キロ走ったアトミクラブの会社員・山口美和さん(54)も、夏にオンライン大会を初体験。「どこかで誰かが走っていると思うと、ちょっと楽しかった」という。

トレーニングアプリ「TATTA」を使っている山口美和さん

 主催側はどう活用したのか。宮城県の沿岸部を走る東北・みやぎ復興マラソン。リアル大会は仙台空港や仙台駅から近い県南部を走るが、オンラインに切り替えた今年は県北部、中部もコースに加え、計三回開催。参加者の八割近くは過去に同大会に出たことがない人たちだった。
 完走者には「沿道」の風景と住民のメッセージ動画が届く。大会事務局の佐藤友治プロデューサーは「大会の目的は被災地の今を見てもらうこと。オンラインだから、今まで東北に来られなかった人にも被災地を気に掛けてもらえた」と手応えを語った。

東北・みやぎ復興マラソンの参加者に送られたメッセージ動画=主催者提供

 文・宮崎美紀子/写真・芹沢純生
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