<プロに聞く くらしとお金の相談室>扶養外れに不安の声

2020年12月24日 07時29分
 扶養を外れて社会保険に加入すると、保険料を自分で払うことになり、かえって損をするのでは-。パートで働く読者から、こうした心配の声が寄せられています。一方、社会保険加入で年金がどれくらい上乗せされるのか、分かりにくい面もあります。保険料や将来の年金額がどのように計算されるのかを調べました。 (河郷丈史)

◆53歳パート メリットあるのか

<Q> 会社員の夫の扶養に入りながらパートで働いています。賃金や勤務時間の条件を満たして社会保険に加入することになりそうだと勤務先から言われ、迷っています。2人の子どもの教育費もかかるので、少しでも多く働きたいですが、職場の同僚は「保険料の支払いで損をした」と言っていました。私は53歳ですが、今から加入してどれだけメリットがあるか分かりません。 (愛知県、女性)

◆老後の年金上乗せ 傷病手当など給付も 社会保険労務士・相川裕里子さん

<A> パート先の社会保険に加入した場合、新たに払わなければならないのが厚生年金保険と健康保険の保険料。いずれも本人の月収から算出される。細かく言うと、収入額に応じて、50等級(厚生年金は32等級まで)にグループ分けした「標準報酬月額」を基に決まる。
 例えば、月9万円の収入を得た場合、保険料はいくらになるか。月収9万3000円未満の場合、標準報酬月額は8万8000円。厚生年金保険料の自己負担分は約8000円となる。標準報酬月額の一覧表の見方などは9月24日付の「くらしとお金の相談室」で紹介している。
 一方、健康保険料は厚生年金保険料のように全国一律ではなく、加入する健康保険組合などによって異なる。全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合は都道府県ごとに保険料率が違い、質問者が住む愛知県の保険料率は介護保険料を含めると11.67%。標準報酬月額に保険料率を掛け、会社との折半分として2で割った約5100円が自分で払う保険料となる。
 将来もらえる老齢厚生年金(報酬比例部分)の計算はかなり複雑。これから社会保険に加入する場合の基本的な計算式は、標準報酬月額と賞与(標準賞与額)の総額を加入月数で割った額(平均標準報酬額)に5.481/1000と加入月数を掛けると、年額のイメージがつかめる。満額で月約6万5000円の基礎年金に上乗せして受け取れる。
 月9万円のパート収入で働き続けた場合の年金額をシミュレーションすると、加入期間が1年なら月500円、10年なら月5000円、20年なら月1万円くらいが増える計算だ。病気やけが、出産でパートを休んだときは、健康保険から月給の3分の2ほどの傷病手当金や出産手当金などの給付を受けることもできる。
 相川さんは「保険料の負担は増えますが、年金は将来への備えになるし、保険の給付は病気など、もしものときに頼りになる」と指摘。「社会保険は損得ではなく、あくまで保険制度として考えましょう」とアドバイスする。

<Q>パート掛け持ち 社会保険は?

 夫の扶養に入りながらパートを二つ掛け持ちしています。月の賃金が8万8000円以上だと社会保険に入るようですが、パート代を合計するとその額を上回る月があります。どちらのパート先も1年以上働いていて、従業員は500人以下。年収は130万円未満です。複数のパート代の合計が月8万8000円以上になると、扶養から外れるのでしょうか。 (愛知県、50代、女性)

<A>1カ所条件満たせば加入

 質問者が現状のまま勤めた場合、パート先で社会保険(厚生年金保険、健康保険)に加入せず、夫の扶養に入り続けられます。その理由を解説する前に、まずはパートが社会保険に加入する条件を整理します。
 現行の制度では、所定の勤務時間や日数が正社員の4分の3以上の場合か、勤務先の従業員数や賃金など五つの条件を全て満たす場合、強制的に厚生年金と健康保険にセットで加入することになります。ただ、賃金の判定基準に注意してください。
 パートを掛け持ちしている人は少なくないでしょうが、社会保険の加入条件では、複数のパートの賃金や勤務時間を合算できません。1カ所で条件を満たす必要があります。
 質問者のパート先従業員数は500人以下なので、対象企業ではありません。ただ、対象は段階的に広がり、2024年10月からは従業員51人以上の企業となります。仮に対象になったら、どちらか一方の勤務先でも勤務時間や賃金の条件を満たせば社会保険に加入します。
 2カ所とも加入の条件を満たす場合、両方の社会保険に入るのではなく、いずれか一つを選びます。保険料は2カ所の賃金の合計額を基に算出されます。健康保険によって保険料率や給付の充実度が違うため、どちらの方が良いか、じっくり検討して選びましょう。
 2カ所とも加入条件を満たさないまま賃金や副業収入の合計額が130万円以上になると、扶養から外れ、国民年金と国民健康保険(国保)の保険料を自分で納めることになります。勤務先が保険料を半分負担する社会保険に比べると負担が重く、厚生年金加入による老後の年金額の上乗せもありません。逆に言えば、配偶者が自営業者などで、もともと国民年金と国保の保険料を自分で払っている人がパート先で社会保険に加入すると、保険料でも年金額でもメリットが大きくなります。
 時間や体力に余裕があるなら、保険料のことはそれほど気にせず、たくさん働いた方が収入アップにつながりますし、仕事のスキルも身に付き、人生の楽しみ方も広がるのではないでしょうか。

社会保険労務士・相川裕里子さん

<あいかわ・ゆりこ> 1968年、千葉県出身。日本女子大卒業後、会社員をしながら96年に社会保険労務士登録。横浜市で社労士事務所「AIコンサルティング」を夫婦で経営。年金相談、手続き実績3000件超。著書に「世界一やさしい障害年金の本」(学研プラス)。本紙生活面「知って得する社会保障」を連載中。

<詳しく>「年収の壁」再確認を

 103万円、130万円…。よく言われるパートの年収の「壁」は今、どうなっているのか。
 税法上、パートの年収が103万円を超えると、自分で所得税を納めるようになり、夫や妻が「配偶者控除」(最大38万円)を受けられなくなる。
 ただ、年収が103万円を超えても、夫や妻は「配偶者特別控除」を受けられる。年収150万円以下なら配偶者控除と同じ最大38万円だ。150万円を超えると段階的に控除額が減り、201万6000円以上でゼロとなる。
 社会保険上では、月収が8万8000円(年収約106万円)以上で、勤務時間や企業規模などの条件を満たせばパート先の社会保険に加入。パート先の社会保険加入の条件を満たさない場合でも、年収が130万円以上になれば扶養から外れる。 (河郷丈史)

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