<コロナ禍の埼玉2020回顧>(2)医療 ICN活躍を力に

2020年12月24日 07時43分

発熱患者の検査・問診を行うプレハブ3棟を指し示す増田院長=いずれも川口市の埼玉協同病院で

 新型コロナウイルスとの闘いの最前線にあたる医療現場。埼玉協同病院(川口市・約四百床)は、国内で感染が広まった初期からPCR検査を実施した。春の「第一波」では軽症患者の入院を受け入れ、今も発熱者の外来診療などを担う。院内の感染対策という重責を担う感染管理看護師(ICN)の吉田智恵子さんは、手探りで走り続けた一年を「本当に怒濤(どとう)のよう」と振り返る。
 一月、吉田さんは報道などで海外での未知のウイルスの流行を知った。その時点では「感染の広がりやリスクの情報が全くない」。国内へウイルスが持ち込まれる可能性を考え、院内に英語と中国語の案内表示を作ることから始めた。
 三月になると県内でも感染者が報告され、同病院でも感染した帰国者が受診。その後、瞬く間に国内感染者が増え、吉田さんら二人のICNは病院の「司令塔」としてフル回転することになった。

ICNの吉田さん

 病院の正面玄関を閉めて人の出入りを絞り、発熱患者にはスタッフがついて他の患者と交わらないよう、敷地内に三棟置いた問診・検査用プレハブまで誘導。院内の動線も分け、防護服やマスクなど資材の確保や在庫管理、PCR検査基準の設定、保健所とのやりとり…。「どんどん新しい情勢に合わせて(やり方を)足したり、やめたりした」。押し寄せる業務を差配し、院長や看護部長らと毎日開く会議を主導した。
 特に重要だったのが、確実に感染を防ぐための防護服の着脱方法の指導だ。当初は防護服が不足し、かき集めたものは品質がバラバラ。着脱方法も異なっていた。供給が安定して品質も向上した現在に至るまで、その都度、専門的な知見に基づき着脱方法を看護師ら各職種に伝えた。同病院でクラスターは発生しておらず、増田剛院長(59)は「ICNの存在が決定的だった。彼女たちがいなければ無理だった」と感謝する。
 一方で全国の医療従事者と同様、同病院の看護師らも偏見や誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)にさらされた。子どもを預ける保育園から「お迎えの時間を変えて」と言われた職員や、家族を気遣い、家に帰らず病院近くにアパートを借りて通勤した人もいる。心身の消耗は激しく、吉田さんも「時々(疲労が)ピークに達する」と打ち明ける。職員同士の支え合いで乗り切っているといい、「たくさん声を掛けられて救われています」と気丈に語る。
 感染拡大の「第三波」が到来し、医療機関の負担が増す中、増田院長は「職員は食事会を控えるなど自律し、使命感も強い」と現場の士気の高さを頼もしく感じている。一方で「ガス抜きもできず、このままでは本格的に燃え尽き症候群やメンタルの問題が出てくるかもしれない」と危機感を示す。長丁場を見据え、職員のケアにも力を入れていく。 (前田朋子)
<感染管理看護師(ICN)> 新型コロナやインフルエンザなど各種感染症の予防や対策を病院内で講じる担当の看護師。さらに吉田さんは、日本看護協会(東京都)が認定する「感染管理認定看護師」の資格を有する。臨床経験を積んだ上で試験に合格する必要があり、感染予防の高い知識や技術を持つ。同協会の資料によると、12月現在で感染管理認定看護師は全国に2852人。うち埼玉県は89人。

◆県内各地の医療機関 人員・物資不足に経営悪化も

 春の「第1波」では、各地の病院で新型コロナ患者の治療に当たる人員や、医療防護具などの不足が深刻化。院内感染が多発し、医療従事者や入院患者らのクラスター(感染者集団)が発生した。コロナ患者受け入れのために一般患者の診療を制限したり、患者の受診控えが広がったりして、病院の経営悪化も問題になった。秋以降の第3波でも、病院で大規模なクラスターが発生している。
 県は12月から、新型コロナとインフルエンザの両方の診療と検査をする医療機関をホームページで公表。多くの診療所や医療機関が休診となる年末年始は、県の相談窓口で受診先などを案内する。
 また、入院患者を受け入れた医療機関への協力金を、患者1人当たり通常の25万円から50万円に増額する。

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