安倍前首相を不起訴、「桜」夕食会問題で 秘書を略式起訴

2020年12月24日 22時31分

2019年8月、山口県下関市の関門海峡花火大会を訪れた安倍前首相と配川博之公設第1秘書(左)

 安倍晋三前首相の政治団体が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の収支を巡り、東京地検特捜部は24日、政治資金規正法違反(不記載)などの疑いで刑事告発された安倍氏を不起訴(嫌疑不十分)とした。政治団体代表の配川博之公設第1秘書(61)=山口県下関市=については、補填分を含む夕食会の収支3022万円を政治資金収支報告書に記載しなかったとして、同法違反罪で略式起訴した。
 安倍氏が刑事責任を問われることなく捜査は終結したが、捜査の過程で補填を巡る国会答弁が事実と異なっていたことが判明し、安倍氏の政治責任が問われる。安倍氏は捜査終結後、国会招致要請に応じる意向を示していた。
 夕食会は、政治団体「安倍晋三後援会」が2013年以降、地元山口県の支援者らを招き、東京都内の高級ホテルで毎年開いてきた。1人5000円の会費だけでは支払額に満たず、安倍氏側が不足分をホテル側に補填していたことが明らかになっている。
 安倍氏は特捜部の任意での事情聴取に「関与していない」と否認。配川秘書は任意聴取に「補填分を含め収支報告書に記載すべきだった」と説明していたとされる。
 起訴状によると、配川秘書は16~19年の4年間、後援会の収支報告書に夕食会の会費収入と、補填分を含むホテル側への支出の計3022万円を記載しなかったとされる。
 全国の弁護士有志らが今年5月以降、安倍氏や配川秘書らを告発。有権者への金品提供を禁じた公選法違反(寄付行為)にも当たると訴えていたが、特捜部はいずれも不起訴とした。

◆繰り返される「秘書処分、議員は不問」、証拠得るため捜査尽くした?

 東京地検特捜部が安倍晋三前首相を嫌疑不十分で不起訴とした。共謀した「証拠」が得られなかったというのが理由だが、証拠を得るための捜査が尽くされたとは言えない。
 安倍氏は特捜部の任意の事情聴取に、夕食会の費用の不足分を秘書らが補填(ほてん)していたことは知らず、「不記載への関与はない」と主張。秘書も任意聴取に、安倍氏には伝えず独断で不記載にしたとの趣旨を説明した。
 だが、安倍氏は高級ホテルで開かれた夕食会に自らも参加していた。その場にいながら会費が1人5000円で足りると本当に信じていたのか。疑惑発覚後に提出された2019年分の政治資金収支報告書にすら、全く関与しようとしなかったのか。
 共謀の立証に必要なのは聴取だけではない。メールや書類などに関与を裏付けるやりとりがないか疑うのが捜査の常道なのに、特捜部は事務所の家宅捜索に踏み切らず、安倍氏の聴取から3日で捜査を終結させた。
 略式起訴された配川博之・公設第一秘書は「安倍氏と一体の金庫番」(地元関係者)だ。積極的な捜査をしていれば、共謀した「証拠」が得られた可能性があったのではないか。
 正式な裁判を開かないことにした簡裁の判断も疑問だ。検察側の略式起訴を正式裁判に切り替えることもできたのに、書面審査だけで略式命令を言い渡した。なぜ安倍氏側は補填(ほてん)をしたのか、原資は何だったのか。公開の法廷で明らかにすべきだった。
 刑事処分されるのは秘書だけで、議員は不問―。こんな結論が繰り返されるのは、議員立法である政治資金規正法が、不記載の主体を会計責任者と定めるからだ。安倍氏が不起訴となったことに疑問を抱く国民は多いだろう。国民の負託に応えるためにも、議員らは自らに厳しい規定に改めるべきだ。(池田悌一)

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