<視点>望月衣塑子 学術会議の任命拒否問題を許せば、言論や表現の自由までも脅かされる 

2020年12月24日 22時32分

◆任命拒否問題への説明なく年越し

 日本学術会議の在り方を巡り、国からの切り離しの検討を求めた井上信治科学技術担当相は24日、梶田隆章会長と会談し、政府としての判断を来年4月以降に先送りすることを決めた。10月に判明した新会員候補6人の任命拒否問題は、政府からの説明は一切ないまま年を越す。
 後手後手のコロナ禍対応で、感染者は連日過去最多を更新している。政府が心血を注ぐべきは、学問の自由への侵害だと批判され続けている会議への人事介入などではなく、医療や検査体制、生活困窮者への支援を充実させ、予想された第3波に備えておくことだったのではないか。

◆2014年に始まった政治介入

 会議への介入や圧力は、菅義偉首相が官房長官だった2014年7月の学術会議の臨時総会後から始まっている。杉田和博官房副長官は、複数名簿の提示要求や会議側が付けた候補者の推薦順位の入れ替え、順位付けの拒否など、会議の独立性を脅かす数々の介入を重ねた。首相は候補に難色を示す理由は「人事の過程」を盾に答えることさえ拒否してきた。
 国会に提出された資料では、杉田氏が会議側に推薦順位の入れ替えを求めた18年9月以降、少なくとも20回にわたり会議事務局と法制局の間で、任命拒否の法的根拠となる文書の修正が繰り返されていたことも判明した。

◆文書黒塗りの理由は…

 文書の一部は「任命権者の考え方に基づき、誤解を招き得る記述」との理由で黒塗りにされている。一体、どんな「考え方」が「誤解を招き得る」のか、法の解釈や運用を示すはずの文書が黒塗りになっている時点で、国会で説明できないような「問題のある考え方」ではないか、との疑念がぬぐえない。
 「準公務員とはいえ公務員」「(105人の候補者リスト)見てない」「旧帝大に所属の会員が45%」「会員の出身や大学に偏りがある」「民間研究者が少ない。多様性が大事」など、菅首相のこれまでの答弁もちぐはぐで矛盾があり、6人拒否の明確な理由になっていない。

◆脅かされる学問、言論、表現の自由

 学術会議を国から切り離すか否かにかかわらず、首相が日本のナショナル・アカデミーの人事に介入した事実は消えない。国際学術会議はじめ海外からは、任命拒否による会議への中立性や独立性への懸念が出ている。切り離しの議論も、そもそも任命拒否問題の解決なくしてはあり得ない話だ。
 全国の研究者も官僚もメディアも、首相や杉田氏の理不尽なこだわりとメンツに振り回され続けている。学問の自由を理解できない者は、言論の自由も表現の自由も確実に脅かしていく。私たちはこの国のリーダーの今回の判断と数々の言動を次の選挙まで絶対に忘れてはなるまい。

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