知の殿堂で知る 日本の近現代史 法政大にミュージアム 一般開放も

2020年12月25日 07時15分

法政大学市ケ谷キャンパスの九段北校舎に開館したHOSEIミュージアム

 法政大学市ケ谷キャンパス(千代田区)にHOSEIミュージアムが開館、一般にも開放を始めた。創立以来の大学の歴史を広く紹介するが、その歴史をたどると、広く日本の近現代史と重なることに気づく。
 ミュージアムの目的は「本学の教育・研究の発展に資する」こと。展示を通じて歴史を振り返ると、明治以降の社会背景が浮き彫りになり、近現代の日本の歩みを知ることができる。
 大学史ゾーンではデジタルを駆使して開学(一八八〇年)以来の歩みを、タッチパネル式の大型ディスプレーで見ることができる。
 例えば、同大教授だった作家の内田百閒(ひゃっけん)(一八八九〜一九七一年)。請われて航空研究会の会長に就任。当初は嫌がっていたが、次第に夢中になったことや在任中に学生が欧州訪問飛行を成功させた快挙が紹介されている。
 軍靴の響きが聞こえてきた昭和初期以降では、治安維持法違反容疑で拘束された京都学派の哲学者、三木清、戸坂潤教授(共に獄死)らが登場。時の政権に学者が弾圧された軌跡が浮かび上がる。

教授だった哲学者の三木清が弟子の桝田啓三郎にあてた手紙の複製

 一九六〇年代後半の学生紛争のコーナーでは、警官隊の学内立ち入りを巡り当時の秦野章警視総監と自主的解決を訴える中村哲総長が繰り広げた論争などが映し出される。
 テーマ展示ゾーンは「HOSEIスポーツの原点」を来年二月三日まで開催中。
 野球部が誕生したのは一九一五年の専門学校時代。現在の東京六大学リーグには早稲田、慶応、明治に次いで一七年に加入した。

法政大野球部の歴史を紹介する展示

 五輪との関わりは九十年近い。初の五輪アスリートは、三二年の米ロサンゼルス五輪に出場したボクシングの中尾明選手と陸上の大木正幹選手。大木選手は千六百メートルリレーで五位入賞を果たした。
 三五年創設のフェンシング部は日本の大学でも草分け的存在。四〇年の東京五輪を見据えて創部された。同五輪の代表候補に部員六人が選ばれたが幻に終わり、その後、外来スポーツの排撃で活動休止に追い込まれた。
 六四年の東京大会では重量挙部(現在のウエイトリフティング部)OBの三宅義信さん(81)が金、弟の義行さん(75)が銀メダルを獲得した。義行選手の娘の宏実選手(35)もOBで、愛用のコスチュームが展示されていた。
 次回(来年三月)のテーマは「都市と大学−法政大学から東京を視(み)る」を予定している。
 HOSEIミュージアムは法政大学九段北校舎一階。感染症対策のため開館時間を短縮中。月曜日−金曜日午前十時〜午後四時(入館は同三時半まで)、土日祝休館。年内は二十五日まで。来年一月八日から開館。入場無料。電03(3264)6501。

◆市民のための大学 歴史に触れて 館長・田中優子総長

 これからの大学は、多様な人々のための知の拠点になります。広い観点から自分に合う大学を選んでこそ、意欲的に学ぶことができます。そのために、大学の個性と価値観を発信する必要があります。
 知っていただきたいのは、法政大学が自由民権運動の盛んな時期(1880年)、市民のための大学として始まったことです。戦後も、権威に頼るのではなく自ら考える力を育てることを目標にしてきました。それらの大学の歴史と価値観を、2016年に法政大学憲章としてまとめました。戦後の法政大学には、労働問題、能楽、沖縄、国際日本学など、日本の核心をテーマとする研究所も作られました。
 HOSEIミュージアムでは、コアスペースを中心として、デジタル・ミュージアムも実現したことで、世界のどこにいても、社会と深くかかわる法政大学の知の歴史を実感することができます。 (寄稿)

◆学内博物館 ほかにも

明治大学博物館は商品、刑事、考古の3分野にわたって展示している=千代田区で

 博物館を併設する大学は多い。研究成果や歴史、所蔵品など特色を生かした史資料を紹介・展示しており、ほとんどは入場無料。
 明治大学博物館(千代田区神田駿河台)は、刑事、商品、考古学各博物館が統合して2004年に開館。常設展示室はこの3分野に分かれている。古い歴史がある刑事部門は過去の時代の法と刑罰を紹介。ギロチンや拷問用具の模型も展示されている。今月は25日まで、年始は1月8日から開館する。午前10時〜午後4時、日祝日休館。入場無料。同大出身の作詞家、阿久悠さんをたたえた記念館もある。
 美術・芸術系大学はアート、デザイン、絵画など工芸品を展示する美術館を持つ。コロナ禍のため入館時間を短縮、制限する博物館もあり、訪問時は事前に確認を。
 文・加藤行平 写真・由木直子、加藤行平
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