沼津高架訴訟、原告敗訴 地裁が全ての請求却下、棄却

2020年12月25日 07時25分

判決後の会見で「まだまだ意欲は消えていない」と語る原告の一人、久保田豊さん(中)=静岡市で

 JR沼津駅周辺の鉄道高架化事業で、貨物駅移転予定地の地権者らが国と県、県収用委員会に事業認可の無効確認や土地収用裁決の事前差し止めなどを求めた行政訴訟で、静岡地裁は二十四日、全ての請求を却下もしくは棄却する判決を出した。 (高橋貴仁)
 事業は沼津駅周辺の交通混雑解消を目的に、駅を高架化し貨物駅と車両駅を市内の別の場所に移す。原告は二〇一六年、提訴していた。
 原告側は、駅周辺の車両通行量は大幅に減り、計画が掲げる交通混雑緩和の目的が消滅していると主張。だが判決は「渋滞や鉄道による南北市街地の分断の課題を解決できていない状況が継続している」とした。
 また原告側の、高架化ではなく橋上駅方式の方が費用が安くなる、という主張も「(橋上駅でも費用は)合計七百二十四億円になり大きく削減できるものとまではいえない」と退けた。
 判決後、海渡雄一弁護士は会見で「時間の経過で不合理になったら見直すのは当たり前。(だが)著しく不合理であることが明らかでなければ見直さなくてよい、という基準を立て、原告の主張を退けた。行政側を救済した判決」と批判。控訴を検討するとした。
<JR沼津駅周辺の鉄道高架事業> 県や沼津市が事業主体となって、沼津駅周辺を再開発する総合整備事業の一つ。県が事業主体の鉄道高架事業は、東海道線約3.7キロ、御殿場線約1.6キロの計5.3キロを鉄道高架化し、国道414号などの8路線を立体交差にする。高架化に伴い、13カ所の踏切も廃止する。現在の車両基地を沼津市西部の片浜地区に移転し、貨物駅を原西部地区に移転する。事業費は約787億円。

◆「戦いの意欲消えていない」原告の久保田さん

 敗訴の判決を聞き、静岡地裁を出た原告の一人の農業久保田豊さん(81)=沼津市一本松=は、支持者の前で静かに「不当判決」の垂れ幕を掲げた。
 久保田さんが先祖から受け継ぐ土地は、新貨物駅の移転予定地。所有権は、県収用委員会の裁決で沼津市に移ったが、明け渡しに応じていない。
 会見では別の原告が久保田さんのコメントを代読。「長年の期待を裏切る結果で大変残念だ。事業が構想された三十五年前に比べ、JR沼津駅前の商業活動は衰退し駅付近を再整備しても、にぎわいの復活は困難。市の負担額は財政規模を大きく上回り、事業費を上回る利益を得られない」と指摘した。
 久保田さんは気持ちを問われ「判決にはふに落ちないところがいろいろある。今後一つ一つ解決するのが戦いだと思う。意欲は消えていない」と語った。
 県からは、来年二月五日までに土地の物件を撤去しなければ、強制的に収用する行政代執行を実施するという戒告書を受けたが「明け渡すつもりはない。権利を主張する。私は一切変わらない」と力を込めた。
 川勝平太知事は判決後、「(貨物駅が移転する原西部地区のため)何ができるかという観点から原告の方も一緒に考えていただき、この事業が地域の発展に生かされるきっかけになれば」と話した。また「久保田さんと一度お目にかかり疑念や訴えたいことがあれば、お話をお伺いしたい。最後の最後までお話を続けたい」とした。
 沼津市の頼重秀一市長は「事業が適正と判断してもらったと受け止めている。鉄道高架は市の発展に必要不可欠。一日も早い完成に向けこれまで以上に推進していく」とコメントした。 (渡辺陽太郎、高橋貴仁)

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