<らくご最前線>桃月庵白酒 先鋭的な「新しい古典」

2020年12月25日 07時39分
 高座生活二十八年の桃月庵白酒(とうげつあんはくしゅ)。二〇〇五年の真打ち昇進でロケットスタートを切って以来、その存在感は増すばかり。今や押しも押されもせぬ看板として、寄席にホール落語に独演会にと大車輪の活躍を見せている。
 十一月二十一日、東京・四谷の紀尾井小ホールで「紀尾井らくご 桃月庵白酒独演会」を見た。邦楽のコンサートに使われる客席数二百五十の会場で、この日は新型コロナ感染拡大予防のため定員半減での開催。白酒は「幾代餅(いくよもち)」「らくだ」と大ネタ二席をみっちり演じた。
 白酒の大ネタは、あくまで軽い味わいで笑いが多い演出が魅力。つき米屋の職人の清蔵が最高級の花魁(おいらん)に恋をする「幾代餅」では、清蔵が恋わずらいだと聞いて爆笑する親方夫妻のリアクション、清蔵の弱々しい声が「幾代に会える」と言われた途端に男らしい美声に一変する「間」の見事さなど、随所にこっけい噺(ばなし)の名手ならではの笑わせどころ満載でハッピーエンドに向かっていく。
 らくだとあだ名される長屋の乱暴者が死んで兄貴分が弔いを出すためにくず屋を脅してこき使う「らくだ」は、くず屋のキャラが陽気なので「トラブルに巻き込まれた男が主役の落語」として素直に笑える。「生前のらくだにいじめられた」という愚痴も悲惨にならない。
 このくず屋が酒乱で、乱暴な兄貴分を脅すようになる後半の楽しさも、白酒ならでは。くず屋と兄貴分の立場が逆転したところで終わらせて後半はやらない演者も多い噺だが、白酒は必ず後半も演じ、酔っぱらいだらけのドタバタ劇をオリジナルなサゲで見事に締める。
 毒舌マクラと現代的なギャグ満載の古典。先鋭的な「新しい古典」を肩肘張らずごく当たり前に提供する白酒の活躍は、今の落語界を支える大きな柱となっている。
 (広瀬和生=落語評論家)

関連キーワード

PR情報