特措法の改正 罰則の効果は疑問だ

2020年12月25日 07時55分
 政府は新型コロナウイルス感染症対策を強化するため、特別措置法の改正に向けた議論を始めた。罰則の導入も検討課題とされているが、国民の協力を得られるか、慎重な議論が必要だ。
 新型コロナの新規感染者は全国で増加が止まらない。英国を中心に感染力を強めたとみられるウイルスの拡大も問題となっている。感染拡大が収まらない中、事業経営の悪化も深刻化している。
 必要な対策は迅速に実施することが求められているが、議論の場である国会は閉じられ、来年一月に召集予定の通常国会まで待たねばならない。国会は責務を果たしているとは言い難い。
 政府は、対策分科会に特措法の改正に向けた論点を示し、議論を始めた。課題は、感染拡大の要因の一つと指摘されている店舗などの対策だ。現行の特措法では営業時間の短縮や休業は都道府県の要請、指示にとどまる。従わなかった場合の罰則もない。
 分科会での議論では、対策の実効性を高めるために協力した事業者への「協力金」など経営支援の制度化と、罰則の導入が検討される。経営支援と罰則の導入は全国知事会が求めていた課題だ。
 営業の自粛を求める以上、それに見合う支援は不可欠だろう。
 その一方、「営業の自由」を罰則を伴って規制する考え方には疑問が残る。自由主義社会では私権制限は常に抑制的であるべきだ。
 協力して営業を自粛すると生活が立ちゆかなくなるため、営業を続けざるを得ない事業者もいるだろう。罰則にどれくらいの感染防止効果があるのか、政府は明確に説明する責任がある。
 また、従業員に対しても休業補償を拡充するなど、雇用対策の見直しも考えたい。
 感染症対策を効果的に進めるには、現場で対策を担う自治体が市民との協力関係を築かなければ、社会全体で取り組めない。そうした努力をせず、懲罰的な対応を優先させても理解は得られまい。
 そもそも「Go To事業」の一時停止判断をはじめ、流行状況や対策実施の判断を巡っては、政府と自治体との間で権限の所在や役割分担がはっきりせず混乱した。連携の目詰まりを解消することこそ先だろう。
 協力することで得られる支援が明確になれば、事業者は経営の見通しがつき、感染症対策に協力しやすくなる。分科会からも「社会の合意を得る議論」を求める意見が出た。当然であろう。

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