安倍氏不起訴 捜査は尽くされたのか

2020年12月25日 07時55分
 秘書は略式起訴だが、安倍晋三前首相は不起訴−。「桜を見る会」夕食会をめぐる東京地検の結論だ。家宅捜索などはせず、罰金で幕引きの構図である。これでは捜査は尽くされたのか疑問だ。
 政治資金の報告書に書くべき収支を書かなかった−それが政治資金規正法の不記載にあたる。検察はそう判断し、秘書の略式起訴を決めた。秘書は違法性の認識は持っていたようだ。
 安倍氏の事情聴取もしたが、「関与していない」と述べたとされる。だが、言い分を聞くだけならば上申書と同じでもある。家宅捜索など考えられる捜査を尽くした上での判断なら理解する。それを行わず、なぜ安倍氏の弁明をうのみにできるのだろうか。
 考えてもみてほしい。「桜を見る会」前日の夕食会は後援会が二〇一三年から毎年、地元の支援者らを招き開かれていた。一人五千円の会費で足りないから、安倍氏側が一六〜一九年の四年間に限っても計約七百万円を補填(ほてん)していた。つまり表面化すれば違法性が問われる事態を、安倍氏を守るべき秘書が続けていたというシナリオが信じられるだろうか。
 不記載額が約三千万円で「少ない」との判断があったと伝えられるが、これが検察の正義なのか。国民は到底、納得できまい。安倍氏が真に迫って「補填はしていない」「明細書もない」と国会答弁を重ねていたが、これが虚偽だったとは、自分の事務所や秘書を統制すらできないことを意味するからだ。にわかに信じ難い。
 確かにまだ検察審査会による異なる判断もありうる。だが検審とて証拠がなくては、検察の不起訴判断を覆すことは困難だ。その意味でも今回の「一件落着」には疑問を持つ。
 今回、簡裁は略式命令で秘書に罰金刑を科した。正式な裁判は開かれず、補填に至った経緯や原資などについて法廷で明らかにされることはなくなった。公判審理を選ばなかった簡裁の判断は極めて残念だ。
 安倍氏の国会での説明についても単なる弁明に終わらせてはなるまい。明白な虚偽を国民は聞かされてきたのである。今回のようなケースこそ、偽証罪に問われうる証人喚問の形で、それを実現させねばならない。
 「桜を見る会」の問題の本質は、支援者らを特別に招く権力の私物化にある。法にも触れかねない問題だ。国会軽視の姿勢といい、その罪はより重いと考える。

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