<回顧2020>競泳・池江選手、1年7カ月ぶりに復帰 ありのままの姿受け入れ 光る内面の強さ

2020年12月26日 06時00分

復帰レースで泳ぎ終え、感極まる池江璃花子。白血病を乗り越え、歩みを進めている=8月29日、東京辰巳国際水泳場で

 新型コロナウイルスの影響で泳ぐ姿を見たのは、会場ではなく画面越しだった。それでも、水中を滑らかに進む様子に目を奪われた。
 白血病で闘病していた競泳の池江璃花子(ルネサンス)が8月、約1年7カ月ぶりにレースに出場した。プールから上がり、あふれる涙。「大きく言えば第二の自分の水泳人生の始まりかな」と発した言葉には、感慨深い思いがにじんでいた。
 プールでの練習を再開させたのは3月。体を動かさずにベッドの上にいた生活から、少しずつ体を慣れさせた。7月のオンライン上での公開練習では、自身の泳力について「中1、中2ぐらいに戻りつつあるんじゃないか」と評した。
 体調に配慮して練習量をセーブする現実を理解する一方、周囲との差に悔しさを抱える一面も。「負けず嫌いなところは変わっていなかった」と言い切る口調は、競技者そのものだった。
 復帰2戦目となった10月の日本学生選手権。前年は一時退院中に3日連続で観戦し、仲間からエールをもらった。思い入れがあり、目標に掲げていた大会。50メートル自由形で4位に入った。8月からタイムを0・7秒縮めたことに驚いたが、印象的だったのは心境の変化を語った言葉だった。
 「前回の試合前は不安が大きかった。以前とは違う感じで、細い体の自分を見せるのがちょっと恥ずかしい気持ちがあった。けど、今回の試合については楽しみのほうが強くて、自信もすごくあった」
 記録や順位でたくましい姿を示すことが、アスリートの本望だろう。しかし、ありのままの姿を受け入れ、思考を切り替えて歩みを進める内面の強さが池江にはあった。
 12月の毎日スポーツ人賞文化賞の際に寄せたビデオメッセージではコロナ禍の1年とも重ね合わせ、「すごく大変なときもあるけど、それを乗り越えたら必ずいいことが待っていると信じて頑張っている」と述べた。まだまだ無理は禁物に違いないが、2021年も生き生きと泳ぐ姿が見られることを望んでいる。(磯部旭弘)

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