<2020・かながわ 取材ノートから>(8)横浜市カジノ IR誘致巡り平行線

2020年12月26日 07時23分

誘致の賛否を問う住民投票に向けて署名を呼び掛ける受任者ら=9月4日、横浜市中区で

 新型コロナウイルスの感染拡大により、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致を目指す横浜市のスケジュールは変更を余儀なくされた。ただ、生じた時間は、誘致に反対する市民の声を聞き、歩み寄るためには使われず、両者は平行線をたどり続けた。
 九月から横浜市担当になり、IR関連の最初の取材は、誘致の賛否を問う住民投票を求める署名集めだった。十月には林文子市長のリコール(解職請求)を目指す署名集めも始まった。市への不信感をあらわにする人たちの姿を目の当たりにした。
 そんな中、市長は同月十六日の定例記者会見で「住民投票がもし行われ、IR誘致が反対多数であれば、それは当然尊重したい」と発言した。しかし、住民投票をする気持ちがあるか問われ「ありません」と断言。果たして住民の意思を重視するつもりがあるのか疑問に感じた。
 十一月、市は「広く意見を頂き、協議する場」(担当者)として「横浜イノベーションIR協議会」を設置した。しかし、メンバーは誘致に賛成する知事や地元商工会議所会頭ら。誘致反対を明言する人はゼロ。設置の趣旨を「公平性、透明性の確保のため」(同)としつつ、会議は途中から非公開になった。同月、民間事業者を選定するための委員会が設置されたが、公開されたのは初会合の冒頭三十分だけ。以降は非公開になった。
 選定委員会を非公開とした理由について林市長は「事業者公募に影響する」として、「公平さ」を強調する。選定後に「速やかに公開する」とした。私は「選定後に公開することが透明性の確保につながるということか」と尋ねると、林市長は「そうです」と答えた。
 しかし、選定が公平か、審議が透明か、決めるのは市民だと思う。重要な情報が多くの市民に知らされないまま、誘致を進め、事業者が決まった後に情報を公開しても遅すぎる。
 年末にかけ、誘致の手続きを粛々と進めている印象を抱いた。来年一月には住民投票を実施するための条例案が市議会で審議される。市民の声を尊重する二〇二一年にしてほしいと願っている。 (丸山耀平)
  =おわり

関連キーワード

PR情報

神奈川の新着

記事一覧