亡くなった子の思い出をそのままに―ガラス製仏具づくりに込めた願い

2020年12月27日 05時55分
 穏やかな気持ちで亡き子の思い出を振り返って―。子どもを亡くした家族らにそんな思いを込めて、千葉県船橋市の住吉育代さん(42)が彩り豊かなガラス製仏具を手掛けている。自身も幼い娘を失い、その経験を基に遺族に寄り添いながら、亡くなった子どもらのイメージに合った色や模様に仕上げる。「少しでも心のよりどころに」と願い。(太田理英子、写真も)

「仏具は毎日向き合うもの。少しでもほっとできるものにしたい」と話す住吉育代さん。手前左が娘をイメージした「HAIRO」シリーズ=いずれも千葉県船橋市で

◆自らも娘亡くし…

 濃淡2種のピンク色で彩り、小さな花模様をあしらったガラス製の香炉や線香立て、仏飯器。代表的シリーズ「HAIRO(はいろ)」は、住吉さんが娘を亡くした時に初めてデザインした。
 先天性心疾患があった長女花彩はいろちゃんは2008年6月、生後8カ月で亡くなった。49日に合わせて仏壇の準備をしようとしたが、店舗に並ぶ仏具は、どれも小さな娘のイメージとかけ離れていた。葬儀の時と同じ白い陶器の仏具をそのまま使ったが、亡くなった現実を冷たく突きつけられているようで、眺めるだけで悲しさが募った。

◆娘のために、娘に会ったものを

 「赤ちゃんに合ったものを作れないか」。かつて働いていた長野県内のアート体験施設の元同僚に、ガラス製の仏具が作れないか相談すると、快く引き受けてくれた。娘の名前や洋服にちなみ、ピンク色と花柄のデザインをリクエスト。09年秋、のちにHAIROシリーズとなる仏具7点が完成した。
 イメージ通りの仏具を手にし、住吉さんは「娘のためにできることがやっと一つ、かなえられた」と喜びが込み上げたという。自宅リビングの一角に仏具を並べて花彩ちゃんのための空間をつくり、「日々一緒に過ごしていると感じられるようになった」と話す。

◆よみがえる笑顔

 同じ思いを抱えている人がいるはずだと、10年1月にガラス製仏具専門店「Bee―S(ビース)」を立ち上げた。

死産を経験した母親からの依頼で青空と太陽をイメージした仏具

 依頼主と相談をしながらデザインを決め、契約先の工房で製造。口コミやブログで徐々に仏具の評判は広がり、この10年で受けた依頼は〓1000〓件を超える。その9割近くが、幼児を中心とした子どもを亡くした人だという。ある母親は、死産をした日に目に焼き付いた「青空ときれいに輝く太陽」のイメージを希望。澄んだ青、白、黄色のグラデーションに仕上げた。
 互いに亡くなった子どもの話に触れられずにいた家族が、住吉さんとデザインの相談をする中で、次第に楽しかった思い出を笑顔で語れるようになることも。住吉さんは「生きた証しは家族の中にある。悲しみは乗り越えられるものではないけど、前を向き、忘れずにいようとする人たちのお手伝いができるとうれしくて」と話す。

◆「1人じゃないよ」

 クリスマスや正月などのイベントが続くこの時期、大切な家族を亡くした人は特につらく孤独を感じやすいという。
 「1人じゃないというメッセージを届けていきたい。娘に与えてもらった使命です」

関連キーワード


おすすめ情報