ファクスで取材依頼、「〇〇ペイ」乱立… 「縦割りの壁」壊せるか

2020年12月27日 05時50分

<デジタル後進国 英国赴任から戻ったら(下)「縦割りの壁」>

 この連載の取材で官公庁や企業に取材を申し込むと、何度か「ファクスで取材依頼を送って」と言われた。英国滞在の3年間にファクスを使ったことは一度もなかった。相手が高齢者でも連絡手段はメールで、文書は主にPDFでやりとりした。
 現金を使うことすら半年に1回程度。特に今年は新型コロナウイルスを媒介する可能性がある現金の使用は敬遠され、ロンドンでは現金禁止の店が多かった。
 日本は逆に現金のみの店が多々ある。リンガーハットやサイゼリヤなどの有名飲食チェーンでも「現金のみ」と言われ、所持金がぎりぎりで焦ったことも。キャッシュレス決済を導入しない理由を本社に尋ねると「移行したいが、フランチャイズが多くて無理強いできず、なかなか進まない」との回答だった。

◆危機に備え「内部留保」設備投資は後まわし



 スイスの国際経営開発研究所が発表する「デジタル競争力ランキング」で、日本は今年、63カ国・地域のうち27位。個別評価では「人材の国際経験」「企業の俊敏性」など4項目が最下位だった
 ファクスに代表される日本企業の動きの悪さについて、経済アナリスト中原圭介さんは「危機対応型内部留保」を一因に挙げる。バブル崩壊や東日本大震災を経験した日本企業は危機に備えて内部留保の確保を優先し、クラウドシステム導入やメールセキュリティ強化など新たな設備投資が遅れたという。
 中原さんはこの経営姿勢を一長一短と評す。「多額の内部留保のおかげでコロナ禍で倒産する企業は少ない。だが、デジタル化で生産性を上げないと、国際競争力が落ち、国民の生活レベルの低下は避けられない」

◆「おもてなし」得意でも連携は苦手

 大和総研の金融アナリスト長内智さんは、日本の現金主義の背景の一つとして「キャッシュレス決済の種類が多く、高齢者は選択に困り、結果的に現金を使っている」と話す。
 確かに帰国後、レジで「○○ペイ」の多さにひるんだ。これこそデジタル化の弊害「縦割り」の象徴と長内さんは言う。「コンビニもスマホの通信事業者も『よそが電子マネーを作ったら、うちも』と対抗し、顧客を囲い込んだ。外国のように同一業界内で連携してプラットフォームを作らないため乱立につながった」
 日本人は元来、かゆい所に手が届くニッチな商品開発が得意で、それが「おもてなし」といわれてきた。しかし企業間の連携は不得意。それは役所も同様だ。今回も住民票は総務省、戸籍は法務省、車庫証明は警察庁、車検証は国土交通省と、取材すら大変だった。
 「エストニアなど先進のデジタル国家は小国ゆえに、そもそも縦割りの概念がないからうまくいった」と長内さん。「現政権に期待はするが、デジタル庁は、省庁の縦割りをどこまで壊せるかが焦点。各省庁を一気通貫できなければ、デジタル改革も看板倒れになる」
(この連載は沢田千秋が担当しました)

さわだ・ちあき 2001年入社。社会部や特別報道部で事件や東京都政、東日本大震災などを取材。17年から3年間、ロンドン特派員を務め、英国の欧州連合(EU)離脱問題や欧州でのテロなどを取材。

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