「核兵器のない世界へ前進を」広島市長、来年1月発効の核禁条約への思い語る

2020年12月27日 05時55分

平和記念式典で「平和宣言」を読み上げる広島市の松井一実市長=2017年8月6日、広島市中区の平和記念公園で

 平和首長会議が核廃絶の期限とした2020年は、核兵器禁止条約の発効が決まり、新たな歩みを踏み出す年となった。会議の会長を務める広島市の松井一実市長は本紙の書面インタビューに応じ、来年1月の核禁条約発効を踏まえ「核兵器のない世界の実現に向けて前進する必要がある」と呼びかけた。
 松井氏は、核兵器を巡る世界の現状について「極めて厳しい状況にある」と指摘する。現在も1万3000発余りの核兵器が存在するため「(核廃絶の)達成を見通すことができない」と分析。核兵器の9割を保有する米ロの軍縮協議が停滞し「事態はむしろ後退している」と危機感を示した。
 一方、平和首長会議が推進した核禁条約の発効決定を歓迎。来年8月に策定する次期ビジョンでは、核廃絶の目標期限は定めず、市民による平和文化の振興に力を入れるとした。
 平和首長会議は国内外の自治体でつくるネットワークで1982年に設立された。03年には、20年までに核廃絶を実現するとした行動指針「2020ビジョン」を定めた。現在、165カ国・地域の7974都市が加盟する。 (木谷孝洋)

◆書面インタビュー全文

 ―2020年は平和首長会議の「2020ビジョン」の最終年に当たるが、世界にいまだ1万3000発余りの核兵器が存在する。現状をどのように受け止めているか。
 「平和首長会議は、2020ビジョン(「全ての核兵器の実戦配備の即時解除」、「全ての核兵器の解体」、「『核兵器禁止条約』締結に向けた具体的交渉の開始」、「同条約の締結」)の下、被爆者の存命のうちに核兵器廃絶を実現することを目指して、加盟都市やその市民、NGO等と連携しながら様々な活動を行ってきました。
 同ビジョンは今年末で終期を迎えますが、2017年に採択された核兵器禁止条約の批准国が50カ国に到達し、来年1月の発効が確定したことから、同ビジョンに掲げた「『核兵器禁止条約』締結に向けた具体的交渉の開始」と、「同条約の締結」の2項目に関しては、実現を図ることができました。

核兵器禁止条約制定交渉に出席して、被爆地の思いを訴える松井一実広島市長(右)=2017年6月、米ニューヨークの国連本部で(北島忠輔撮影)

 一方で、同ビジョンの「全ての核兵器の実戦配備の即時解除」と、「全ての核兵器の解体」の2項目については、達成を見通すことができない状況にあります。同ビジョンを策定した2003年には世界に1万6500発程度存在した核兵器は、2020年時点で減少しているものの、依然として1万3400発程度存在しています。
 また、核拡散防止条約(NPT)体制の下にありながら、核兵器をより「使いやすく」するための近代化や小型化も進められているなど、現下の核軍縮を巡る国際情勢は極めて厳しい状況にあります。とりわけ世界の核兵器の9割を保有する米国とロシアの核軍縮は協議すら停滞しており、むしろ事態は後退していると受け止めています」
 ―平和首長会議として2021年以降、どのような活動を展開するのか。また、新たな核廃絶の目標年を設けるのか。
 「2021年以降の活動展開は、来年8月に開催予定の第10回平和首長会議総会で策定することとしている次期ビジョン及び行動計画で確定することになりますが、現時点で言えることは、現行動計画に掲げている『核兵器のない世界の実現』と『安全で活力のある都市の実現』という2つの目標は、次期ビジョンでも継続して掲げることになるということです。
 その上で、後退しているとも言える核軍縮協議を始動させ、さらに、核兵器のない世界の実現に向けて前進する必要があると考えています。その際重要となるのは、核保有国とその同盟国が依存し続けている『核抑止力』は、『核戦争に勝者なし』と言われている今、有効ではないということを世界中の市民社会が発信し、平和への大きな潮流をつくり、為政者の政策転換を強力に後押しする環境づくりを進めていくことであると考えています。
 そうした環境づくりを推進するためには、より根源的に、市民1人1人が日常生活の中で平和について考え、行動することを奨励する必要があると考えています。平和首長会議役員都市との協議により、次期ビジョンの下で取り組むことが決定している『平和文化の振興』は、その考えを具現するものです。
 次期ビジョンは、長期的には核兵器廃絶を目指すとしながらも、核抑止力に依存することを是とする政策の転換が図られるような環境づくりを行うための行動指針を示すものであるため、目標年限は設けず、具体的な取組を示す行動計画について、2年ごとに開催する理事会や4年ごとに開催する総会で進捗(しんちょく)状況を点検して改定することとしています」

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