「核兵器はコロナ禍では役に立たない」 扉開いた2020年、そして2045年の廃絶へ ICAN川崎哲氏に聞く

2020年12月26日 05時55分
 世界が新型コロナウイルス感染拡大に苦しんだ2020年は、核兵器禁止条約の発効決定という核廃絶にとって大きな節目の年となった。核を巡る現状と廃絶への展望を、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員の川崎哲氏に聞いた。 (木谷孝洋) 

ICAN国際運営委員の川崎哲氏

 ―この1年の評価は。
 「核禁条約の発効決定が一番大きな出来事だ。平和首長会議の『2020ビジョン』の目標年で、被爆者の存命中に核廃絶を達成すると決意した年だった。核兵器ゼロにはできなかったが、核兵器を違法化する条約が国際法として確立することになり、核なき世界への扉を開く年になった」
 ―現実には核軍縮は進んでいない。
 「地球最後の日までの残り時間を概念的に示す『終末時計』が今年1月、2分から100秒と過去最短になり危機は高まっている。米ロの中距離核戦力(INF)廃棄条約が失効し、大国間の核の軍備管理は壊れつつある。来年1月に米大統領が交代すれば状況は多少変わるかもしれないが、米中対立など予断は許さない」
 ―新型コロナは核軍縮の動きにも影響を与えた。
 「コロナ禍が始まった春先は棚上げの1年になるかと思ったが、そうはならなかった。オンラインでの活動が一気に広がり、被爆者たちが証言し、延期になった核拡散防止条約(NPT)再検討会議の代わりとなるイベントをNGOが企画した。若い世代が参加するきっかけを得た」
 ―コロナは核を巡る議論も変えたのでは。
 「多くの人が安全保障を考え直す契機になったのではないか。つまり、国は私たちを守ってくれるのかということだ。核兵器はコロナ禍では役に立たない。ICANが核兵器に使われる資金でどれだけ人工呼吸器を確保できるかを試算したら、大きな注目を集めた」
 ―日本政府の立場をどう見るか。
 「核禁条約に見向きもしないし、核抑止力が日本の安全の土台だと言い続けている。だが世論調査では、6、7割の人が日本も条約に参加すべきだと答えた。参加国が増えれば、核に頼らない安全保障を模索する国が出てくる可能性がある。米国の核だけに頼ることは日本にとって危険だ」
 ―米ロはいまだ、約6000発の核弾頭を持つ。核廃絶はいつ達成できるか。
 「冷戦後の1990年代に米ロは毎年1000発単位で核兵器を減らしていた。今後10年間で核兵器をなくす合意ができれば、被爆100年後の2045年に核なき世界が誕生することは可能ではないか。最大の障壁は私たちの心に潜む『世界は変えられない』という諦めだ」

 かわさき・あきら 1968年、東京都生まれ。東京大卒。2003年からNGO「ピースボート」共同代表。10年から活動に携わるNGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」は、核兵器禁止条約の実現に尽力したとして、17年にノーベル平和賞を受賞。

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