<コロナ禍の埼玉2020回顧>(5)介護 会えず 家族に不安

2020年12月28日 07時17分

面会制限が続き、窓ガラス越しに家族と対面する入所者の女性(右)(越谷さくらの杜提供)

 秋の夜長に笑顔が重なった。九月末、越谷市の特別養護老人ホーム「越谷さくらの杜(もり)」の駐車場で、花火大会が開かれた。新型コロナウイルス禍の中でも癒やしを提供したいと、職員が手作りした企画。長さ三十メートルのナイアガラ花火が織りなす光の滝に、入所者たちが目を見張った。
 感染予防のため参加を見合わせた家族に向け、写真共有アプリのインスタグラムで生配信もした。「なかなか家族が会えない中、同じ時間に同じ光景を楽しんでもらいたかった」。介護主任の高木悠さん(32)が振り返る。
 重症化リスクの高い高齢者を抱える介護福祉施設では二月以降、緊急の場合を除いて面会制限が続く。国は十月、緩和の方針を示したが、感染の「第三波」で慎重にならざるを得ないのが実情だ。約百四十人が生活する越谷さくらの杜でも、オンラインや窓ガラス越しの面会に限っている。
 「これまで幸い一人も感染者は出ていないが、危機感は常にある。気が抜けない」と高木さん。県内では福祉施設でクラスター(感染者集団)が多発し、生活相談担当の職員、磯部拓朗さん(33)も「人ごとではない。明日はわが身」と緊張感をにじませる。
 施設内ではマスクや手指消毒など基本的な対策を徹底し、食事を取る職員同士の会話も禁止している。それでも「自分から感染を広げてしまったら…」との懸念は消えない。「人混みはできるだけ避けている」(高木さん)、「外出から帰宅したらすぐ風呂に入る」(磯部さん)と職場を離れても警戒は続く。
 こうした現場の負担に感謝しつつ、家族の不安も増している。越谷市内の別の特養に九十歳の母親を預ける女性(61)は、認知機能が衰え始めていた母が最近、同じ話を繰り返すことが多くなったと感じている。
 外出好きの母を施設から連れ出し、美容院で髪を整えてもらい、店で一緒に食事するのが月に一度の楽しみだった。「高齢で残された人生も長くはなく、大事な時間だった」。コロナ禍で、それもかなわなくなった。
 「会いたい気持ちは募るけど、感染の可能性を考えると怖いという思いもある」と複雑な胸中の女性。昨年まで付き添っていた年末のクリスマス会や餅つきも、今年のカレンダーから予定が消えた。「私の顔を忘れてしまわないだろうか」。親子のぬくもりが断たれたまま、新年を迎えようとしている。 (近藤統義)

コロナ禍の施設の苦労を語る高木さん(右)と磯部さん=いずれも越谷市で

◆高齢者、面会制限で症状悪化も 心身充実との両立課題

 県のまとめ(24日現在)によると、県内では高齢者施設174カ所で職員と利用者計744人の感染が確認されている。
 クラスターの目安となる5人以上の感染も31カ所に上る。このうち23カ所は10月以降の発生で、「第3波」の感染者急増の要因となっている。
 基礎疾患による発熱と見誤るなどして対応が遅れ、施設内での感染が拡大した例もあり、県は改めて警戒を呼び掛けようと、11月から年末にかけて1000カ所超の施設を緊急巡回。福祉施設専用の相談窓口も設け、対応している。
 広島大や日本老年医学会などの調査では、面会制限や外出自粛によって認知症の入所者らの症状が悪化したとの結果も出ている。高齢者の心身の充実と感染対策をどう両立させるのかが課題となっている。

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