EU完全離脱のイギリス トラック大渋滞で物流が止まる? 食品を備蓄する人も…

2020年12月30日 06時00分

12月中旬、英南東部セビントンで、税関検査施設やトラック駐車場の整備が進む現場=藤沢有哉撮影

 【ロンドン=藤沢有哉】欧州連合(EU)を離脱した英国が加盟国並みの状態を保つ「移行期間」が、31日午後11時(日本時間来年1月1日午前8時)に終わる。自由貿易協定(FTA)交渉の合意により、貿易はこれまで通り関税がかからないままだが、輸出入に関する申告といった通関手続きが復活する。英国では通関待ちトラックの大渋滞による物流停滞が懸念され、食品を備蓄する人もいる。

◆駐車場で混雑懸念「街を出たい人も」

 「EUとの物流が止まるのを避けるために、私たちの生活が犠牲になるかもしれない」。今月中旬、英南東部セビントン。無職ジャック・ジェニングスさん(53)は買い物に訪れた商業施設で、年明けの街の混乱を心配した。近くでは、税関検査施設を併設した大規模なトラック駐車場の整備が進んでいた。
 移行期間が終われば、1日約1万台のトラックがフェリーに乗るなどして往来する英仏間のドーバー海峡でも、通関業務が復活する。英政府は、輸出関連の申告書の不備などにより、仏側の通関で足止めされるトラックの続出を懸念。ドーバー港近辺に通関待ちのトラックが滞留すれば仏側からの輸入が止まる恐れがあり、車両が待避するための駐車場を各地に整備する。海峡から西へ30キロのセビントンもその1つだ。
 英メディアによると、セビントン駐車場は年明けから1200台を収容可能。ただ、地元住民は「駐車場周辺が混雑すれば、私たちが身動きとれない」などと不安を抱く。写真家テリー・バットンさん(62)は「政府は地元に何の補償もしない。街を出て行きたがっている人もいる」と憤る。

◆パスタや缶詰2、3ヵ月分を確保

  政府は駐車場整備の他にも、輸出に必要な申告書類がそろっているかなどを、オンラインで事前に確認する取り組みも展開。ただ、すべての車両に義務付けたわけではなく効果は未知数だ。ドーバー港周辺は今月下旬、新型コロナウイルス変異種による輸送停止措置で足止めされたトラックが列を成したばかり。移行期間後の渋滞発生、さらにはEUとの物流停滞への懸念は根強い。
 EU産の食品や薬品の一時的な品不足に備え、既に備蓄をする人も。リバプールの紀行作家グラハム・ヒューズさん(41)は「パスタや米、缶詰など2、3カ月分の食料を確保した」。長時間の輸送に耐えられないEU産の野菜や果物などは品不足になる可能性がより高いと指摘し、「今と同じ食生活は難しくなる恐れもある。そうなればEU離脱に伴う人災だ」と語った。

英EUの貿易 2019年の物品の貿易額は4300億ポンド(約60兆円)超。EUの単一市場、関税同盟は圏内で物品の自由移動を認めているが、移行期間が終わると英国はこの経済圏を離れるため、英EU貿易で通関手続きが復活する。英政府は通関手続き混乱による物流停滞を防ぐため、EU側からの輸入関連の申告手続きは半年間猶予する。

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